死亡リスクの高い肺動脈性肺高血圧症患者に対するソタテルセプト
Sotatercept in Patients with Pulmonary Arterial Hypertension at High Risk for Death
M. Humbert and Others
ソタテルセプト(sotatercept)は,世界保健機関(WHO)機能分類 II 度または III 度の肺動脈性肺高血圧症患者の運動耐容能を改善し,臨床的悪化までの期間を延長させる.進行した肺動脈性肺高血圧症を有し,死亡リスクの高い患者に対する,ソタテルセプト追加の効果は明らかでない.
第 3 相試験で,肺動脈性肺高血圧症(WHO 機能分類 III 度または IV 度)を有し,1 年死亡リスクが高く(早期および長期肺動脈性肺高血圧症疾患管理評価レジストリ [REVEAL] Lite 2 リスクスコア 9 以上),基礎治療を最大耐用量で受けている患者を,ソタテルセプト(開始用量 0.3 mg/kg 体重,目標用量 0.7 mg/kg まで漸増)の 3 週ごと投与を追加する群と,プラセボ投与を追加する群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,全死因死亡,肺移植,肺動脈性肺高血圧症の悪化による入院(24 時間以上)の複合とし,生存時間(time-to-first-event)解析で評価した.
172 例が組み入れられた(ソタテルセプト群 86 例,プラセボ群 86 例).事前に規定した中間解析で有効性が示されたため,試験は早期に中止された.主要評価項目イベントは,ソタテルセプト群では 15 例(17.4%),プラセボ群では 47 例(54.7%)に 1 件以上発生した(ハザード比 0.24,95%信頼区間 0.13~0.43,P<0.001).全死因死亡は,ソタテルセプト群では 7 例(8.1%),プラセボ群では 13 例(15.1%)に発生した.肺移植はそれぞれ 1 例(1.2%)と 6 例(7.0%)が受け,肺動脈性肺高血圧症の悪化による入院は 8 例(9.3%)と 43 例(50.0%)に発生した.ソタテルセプト群でとくに頻度が高かった有害事象は,鼻出血と毛細血管拡張であった.
肺動脈性肺高血圧症を有し,基礎治療を最大耐用量で受けている高リスクの成人にソタテルセプトを投与した場合,全死因死亡,肺移植,肺動脈性肺高血圧症の悪化による入院(24 時間以上)の複合のリスクは,プラセボを投与した場合よりも低かった.(メルク シャープ アンド ドーム社 [メルク社の子会社,ニュージャージー州ローウェイ] から研究助成を受けた.ZENITH 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04896008)