特発性肺線維症患者に対するネランドミラスト
Nerandomilast in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis
L. Richeldi and Others
ネランドミラスト(nerandomilast;BI 1015550)は,ホスホジエステラーゼ 4B を優先的に阻害する経口薬であり,抗線維化作用と免疫調節作用を有する.特発性肺線維症患者を対象とした第 2 相試験では,ネランドミラストの投与により,12 週の期間中,肺機能が安定化した.
第 3 相二重盲検試験で,特発性肺線維症患者を,ネランドミラスト 18 mg を 1 日 2 回投与する群,ネランドミラスト 9 mg を 1 日 2 回投与する群,プラセボを投与する群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付けた.無作為化は,基礎治療の抗線維化療法(ニンテダニブまたはピルフェニドン 対 なし)で層別化して行った.主要評価項目は,52 週の時点での努力肺活量(FVC;単位は mL)の,ベースラインからの変化量の絶対値とした.
1,177 例が無作為化された.77.7%が登録時にニンテダニブまたはピルフェニドンを服用していた.52 週の時点での FVC の補正後の平均変化量は,ネランドミラスト 18 mg 群で -114.7 mL(95%信頼区間 [CI] -141.8~-87.5),ネランドミラスト 9 mg 群で -138.6 mL(95% CI -165.6~-111.6),プラセボ群で -183.5 mL(95% CI -210.9~-156.1)であった.ネランドミラスト 18 mg 群とプラセボ群との補正後の差は 68.8 mL(95% CI 30.3~107.4,P<0.001)であり,ネランドミラスト 9 mg 群とプラセボ群との補正後の差は 44.9 mL(95% CI 6.4~83.3,P=0.02)であった.ネランドミラスト群でもっとも頻度が高かった有害事象は下痢であり,18 mg 群では 41.3%,9 mg 群では 31.1%で報告されたのに対し,プラセボ群では 16.0%であった.重篤な有害事象の発現割合は 3 群で同程度であった.
特発性肺線維症患者にネランドミラストを投与した場合,52 週の期間中の FVC 低下は,プラセボを投与した場合よりも小さかった.(ベーリンガーインゲルハイム社から研究助成を受けた.FIBRONEER-IPF 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05321069)