進行性肺線維症患者に対するネランドミラスト
Nerandomilast in Patients with Progressive Pulmonary Fibrosis
T.M. Maher and Others
ネランドミラスト(nerandomilast;BI 1015550)は,ホスホジエステラーゼ 4B を優先的に阻害する経口薬であり,抗線維化作用と免疫調節作用を有する.ネランドミラストは,特発性肺線維症の進行を抑制することが示されているが,特発性肺線維症以外の,線維化を伴う間質性肺疾患の進行性の経過(進行性肺線維症)に対する効果を評価する必要がある.
第 3 相二重盲検試験で,進行性肺線維症患者を,ネランドミラスト 18 mg を 1 日 2 回投与する群,ネランドミラスト 9 mg を 1 日 2 回投与する群,プラセボを投与する群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付けた.無作為化は,基礎治療(ニンテダニブ 対 なし)と,高解像度 CT 上の線維化パターン(通常の間質性肺炎様パターン 対 その他のパターン)で層別化して行った.主要評価項目は,52 週の時点での努力肺活量(FVC;単位は mL)の,ベースラインからの変化量の絶対値とした.
1,176 例がネランドミラストまたはプラセボの投与を 1 回以上受けた.43.5%がベースライン時に基礎治療としてニンテダニブを服用していた.52 週の時点での FVC の補正後の平均変化量は,ネランドミラスト 18 mg 群で -98.6 mL(95%信頼区間 [CI] -123.7~-73.4),ネランドミラスト 9 mg 群で -84.6 mL(95% CI -109.6~-59.7),プラセボ群で -165.8 mL(95% CI -190.5~-141.0)であった.ネランドミラスト 18 mg 群とプラセボ群との補正後の差は 67.2 mL(95% CI 31.9~102.5,P<0.001)であり,ネランドミラスト 9 mg 群とプラセボ群との補正後の差は 81.1 mL(95% CI 46.0~116.3,P<0.001)であった.もっとも頻度が高かった有害事象は下痢であり,ネランドミラスト 18 mg 群では 36.6%,ネランドミラスト 9 mg 群では 29.5%,プラセボ群では 24.7%で報告された.重篤な有害事象の発現割合は 3 群で同程度であった.
進行性肺線維症患者にネランドミラストを投与した場合,52 週の期間中の FVC 低下は,プラセボを投与した場合よりも小さかった.(ベーリンガーインゲルハイム社から研究助成を受けた.FIBRONEER-ILD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05321082)