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June 12, 2025 Vol. 392 No. 22

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重症血友病 B に対する AAV 遺伝子治療の持続的な臨床上の利益
Sustained Clinical Benefit of AAV Gene Therapy in Severe Hemophilia B

U.M. Reiss and Others

背景

アデノ随伴ウイルス(AAV)を介した遺伝子治療は,血友病 B の有望な治療法として現れた.scAAV2/8-LP1-hFIXco 遺伝子治療が成功した患者コホートの 13 年間の追跡調査から,安全性と持続性に関するデータが利用可能となった.

方 法

重症血友病 B の男性 10 例に,scAAV2/8-LP1-hFIXco ベクターを,3 用量(低用量:2×1011 ベクターゲノム [vg]/kg 体重 [2 例],中用量:6×1011 vg/kg [2 例],高用量:2×1012 vg/kg [6 例])のいずれかで単回点滴静注した.有効性転帰は,第 IX 因子活性,年間出血率,第 IX 因子濃縮製剤の使用などとした.安全性は,臨床イベント,肝機能,画像検査などで評価した.

結 果

追跡期間は中央値で 13.0 年(範囲 11.1~13.8)であった.第 IX 因子活性は,追跡期間中すべての用量コホートで安定しており,平均値は低用量群で 1.7 IU/dL,中用量群で 2.3 IU/dL,高用量群で 4.8 IU/dL であった.10 例中 7 例は補充療法を受けなかった.年間出血率の中央値は,14.0 件(四分位範囲 12.0~21.5)から 1.5 件(四分位範囲 0.7~2.2)へと,9.7 分の 1 に減少した.第 IX 因子濃縮製剤の使用量は 12.4 分の 1(四分位範囲 2.2 分の 1~27.1 分の 1)に減少した.ベクター関連の有害事象は 15 件発現し,主にアミノトランスフェラーゼの一過性の上昇であった.第 IX 因子インヒビター,血栓症,慢性肝障害が出現した参加者はいなかった.癌が 2 件同定されたが,専門家の集学的チームと試験担当医師により,ベクターには関連しないと判断された.点滴静注後 10 年の時点で,1 例に肝生検が行われた.肝細胞中に転写活性のある導入遺伝子の発現が認められたが,線維化や異形成はみられなかった.AAV8 に対する中和抗体価が追跡期間中高かったことから,ベクターの再投与の障壁となる可能性が示唆された.

結 論

単回投与の scAAV2/8-LP1-hFIXco 遺伝子治療により,13 年の期間中,第 IX 因子発現が持続し,臨床上の利益が維持され,遅発性の安全性の懸念は認められなかった.これらのデータは,重症血友病 B に対する AAV 遺伝子治療の長期的な有効性と安全性を支持している.(英国医学研究評議会ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00979238,EudraCT 登録番号 2005-005711-17)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 2226 - 34. )