September 25, 2025 Vol. 393 No. 12
脳梗塞に対する静脈内血栓溶解療法後のチロフィバンの早期注入
Early Tirofiban Infusion after Intravenous Thrombolysis for Stroke
C. Tao and Others
急性期脳梗塞に対する標準治療は,依然として発症後 4.5 時間以内の静脈内血栓溶解療法である.静脈内血栓溶解療法後に血管が再閉塞する可能性があるが,血栓溶解療法後 24 時間以内の抗血小板薬投与によって予防できる可能性がある.血小板糖蛋白 IIb–IIIa 受容体拮抗薬であるチロフィバン(tirofiban)は,実験モデルにおいて,大血管の再閉塞を減少させた.
中国の 38 施設で行った第 3 相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験において,脳梗塞発症後 4.5 時間以内に受診し,血栓除去術の適応がなかった急性期非心原性脳梗塞患者を,静脈内血栓溶解療法後 60 分以内にチロフィバンの 24 時間点滴静注を行う群と,プラセボを投与する群に割り付けた.主要有効性転帰は,90 日の時点での良好な機能的転帰(修正ランキンスケールのスコアが 0~1 と定義)とした.安全性転帰は,36 時間以内の症候性頭蓋内出血と,90 日の時点での死亡とした.
414 例がチロフィバン群,418 例がプラセボ群に割り付けられた.使用された血栓溶解薬は,アルテプラーゼ(患者の 75%に使用)とテネクテプラーゼ(tenecteplase)(25%に使用)であった.90 日の時点で,修正ランキンスケールのスコアが 0~1 と報告された患者の割合は,チロフィバン群のほうがプラセボ群よりも高かった(65.9% 対 54.9%,リスク比 1.20,95%信頼区間 1.07~1.34,P=0.001).症候性頭蓋内出血は,チロフィバン群では 1.7%に発生し,プラセボ群では発生しなかった.90 日の時点での死亡率は,チロフィバン群 4.1%,プラセボ群 3.8%であった.
発症後 4.5 時間以内に血栓溶解療法を受けた急性期非心原性脳梗塞患者では,早期のチロフィバン投与により,良好な機能的転帰が得られる可能性が増加した.頭蓋内出血の発生率は低かったが,チロフィバンのほうがプラセボよりも高かった.(中国の中央大学基礎研究基金から研究助成を受けた.ASSET-IT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT06134622)