シクロホスファミドとシクロスポリンによる移植片対宿主病予防
Graft-versus-Host Disease Prophylaxis with Cyclophosphamide and Cyclosporin
D.J. Curtis and Others
高リスク造血器腫瘍患者では,治癒的治療法として骨髄破壊的前処置後の HLA 一致血縁ドナー(MRD)からの同種末梢血幹細胞移植(SCT)が選好される.これらの患者の移植片対宿主病(GVHD)予防の標準治療は,依然としてカルシニューリン阻害薬と代謝拮抗薬の併用である.2 件の無作為化試験のデータから,移植後,シクロホスファミドを代謝拮抗薬に追加した場合や,代謝拮抗薬と置き換えた場合に,MRD からの SCT 後の GVHD リスクを低下させられる可能性があることが示唆されている.しかし,移植後,とくに MRD からの SCT 後のシクロホスファミドの効果は依然として明確でなく,骨髄破壊的前処置が用いられた場合の効果は明らかでない.
骨髄破壊的前処置後または強度減弱前処置後に MRD から SCT を受ける成人を,移植後にシクロホスファミド+シクロスポリンを投与する(実験的予防)群と,シクロスポリン+メトトレキサートを投与する(標準予防)群に無作為に割り付けた.主要評価項目は GVHD 非発症無再発生存とした.
134 例が無作為化され,66 例が実験的予防群,68 例が標準予防群に割り付けられた.GVHD 非発症無再発生存期間は,実験的予防群(中央値 26.2 ヵ月,95%信頼区間 [CI] 9.1~未到達)のほうが標準予防群(中央値 6.4 ヵ月,95% CI 5.6~8.3)よりも有意に長かった(log-rank 検定で P<0.001).3 年の時点での GVHD 非発症無再発生存率は,実験的予防群 49%(95% CI 36~61),標準予防群 14%(95% CI 6~25)であった(GVHD,再発,死亡のハザード比 0.42;95% CI 0.27~0.66).3 ヵ月の時点でのグレード III~IV の急性 GVHD の累積発生率は,実験的予防群 3%(95% CI 1~10),標準予防群 10%(95% CI 4~19)であった.2 年の時点で,全生存率はそれぞれ 83%と 71%であった(死亡のハザード比 0.59,95% CI 0.29~1.19).SCT 後 100 日間の重篤な有害事象の発現率は,2 群で同程度であった.
造血器腫瘍患者において,強度減弱前処置または骨髄破壊的前処置による MRD からの移植後に,シクロホスファミドとカルシニューリン阻害薬を併用した場合,標準予防を行った場合と比較して,GVHD 非発症無再発生存期間が長かった.(オーストラリア政府医学研究将来基金ほかから研究助成を受けた.ALLG BM12 CAST 試験:Australian–New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12618000505202)