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July 24, 2025 Vol. 393 No. 4

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マラリアを制御するためのイベルメクチン ― クラスター無作為化試験
Ivermectin to Control Malaria — A Cluster-Randomized Trial

C. Chaccour and Others

背景

マラリアの制御と根絶は,ベクターにおける殺虫剤抵抗性の拡大や行動適応によって脅かされている.広域スペクトルの抗寄生虫薬であるイベルメクチンは,投与を受けた人を吸血した蚊を殺すこともできる.イベルメクチンの集団投与により,マラリアの伝播を抑制できるかは明らかでない.

方 法

マラリアが高度に蔓延し,殺虫剤処理した蚊帳の普及率と使用率が高いケニア海岸地帯の郡であるクワレで,クラスター無作為化試験を行った.世帯地域のクラスターを,イベルメクチン(400 μg/kg 体重)の集団投与を行う群と,アルベンダゾール(400 mg,実薬対照)の集団投与を行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付け,短雨季の開始時に,月 1 回,3 ヵ月連続で投与した.5~15 歳の小児に対して,1 回目の投与後 6 ヵ月間,マラリア感染の検査を月 1 回行った.主要転帰は,マラリア感染の累積発生率(5~15 歳の小児で評価)と,有害事象の累積発現率(適格な参加者全員で評価)の 2 つとした.解析は,一般化推定方程式を用いて,intention-to-treat の原則に基づいて行った.

結 果

適格であった 28,932 人から成る計 84 クラスターを無作為化した.2 群のベースライン特性は同様であった.1 回目の治療後 6 ヵ月の時点で,マラリア感染の発生率は,イベルメクチン群では小児 1 リスク人年あたり 2.20 件,アルベンダゾール群では小児 1 リスク人年あたり 2.66 件であり,補正後の発生率比(イベルメクチン 対 アルベンダゾール)は 0.74(95%信頼区間 [CI] 0.58~0.95,P=0.02)であった.投与 100 回あたりの重篤な有害事象の発現率に,群間で有意差は認められなかった(発現率比 0.63,95% CI 0.21~1.91).

結 論

蚊帳の普及率と使用率が高い地域に居住する 5~15 歳の小児に対して,イベルメクチンを月 1 回,3 ヵ月連続で投与した場合,アルベンダゾールを投与した場合と比較して,マラリア感染の発生率は 26%低かった.安全性に関する懸念は認められなかった.(ユニットエイドから研究助成を受けた.BOHEMIA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04966702,Pan African Clinical Trial Registry 番号 PACTR202106695877303)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 362 - 75. )