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July 31, 2025 Vol. 393 No. 5

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心臓手術における希釈式自己血輸血の無作為化試験
A Randomized Trial of Acute Normovolemic Hemodilution in Cardiac Surgery

F. Monaco and Others

背景

心臓手術を受ける患者は赤血球輸血を受けることが多いが,赤血球輸血はリスクを伴い,費用がかかる.術中早期の採血・輸液による血液希釈(すなわち,希釈式自己血輸血 [ANH])は,人工心肺開始前に自己血を採取し,人工心肺離脱後に返血する血液保存法である.ANH によって同種赤血球輸血を受ける患者の数が減少するかを明らかにするためには,さらにデータが必要である.

方 法

国際共同単盲検試験において,11 ヵ国 32 施設から,人工心肺を用いた心臓手術を受ける予定の成人を,ANH(650 mL 以上の全血を取り出し,必要に応じて晶質液を補充)を行う群と,通常のケアを行う群に無作為に割り付けた.主要転帰は,入院中の同種赤血球の 1 単位以上の輸血とした.副次的転帰は,術後 30 日以内または手術のための入院中の全死因死亡,出血性合併症,虚血性合併症,急性腎障害とした.

結 果

2,010 例が無作為化され,1,010 例が ANH 群,1,000 例が通常ケア群に割り付けられた.データを入手しえた ANH 群の 1,005 例中 274 例(27.3%)と,通常ケア群の 997 例中 291 例(29.2%)が,同種赤血球輸血を 1 回以上受けた(相対リスク 0.93,95%信頼区間 0.81~1.07,P=0.34).術後出血に対する手術は,ANH 群の 1,004 例中 38 例(3.8%)と,通常ケア群の 995 例中 26 例(2.6%)に施行された.30 日以内または入院中の死亡は,ANH 群の 1,008 例中 14 例(1.4%)と,通常ケア群の 997 例中 16 例(1.6%)に発生した.安全性転帰は 2 群で同様であった.

結 論

心臓手術を受ける成人において,ANH は,同種赤血球輸血を受ける患者の数を減少させなかった.(イタリア保健省から研究助成を受けた.ANH 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03913481)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 450 - 60. )