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August 7, 2025 Vol. 393 No. 6

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腺ペストに対するシプロフロキサシンとアミノグリコシド系薬+シプロフロキサシンとの比較
Ciprofloxacin versus Aminoglycoside–Ciprofloxacin for Bubonic Plague

R.V. Randremanana and Others

背景

ペストは,重大な被害をもたらす感染症であり,蔓延する可能性がある.現在の治療ガイドラインは弱いエビデンスに基づいている.

方 法

マダガスカルで,2020~24 年に臨床的に腺ペストが疑われた人(妊娠者を除く)を登録した.非盲検非劣性デザインを用いて,国のペストガイドラインに掲載されている 2 つの治療法,すなわち,シプロフロキサシンを 10 日間経口投与する治療法(シプロフロキサシン単剤療法)と,アミノグリコシド系薬を 3 日間注射で投与したあと,シプロフロキサシンを 7 日間経口投与する治療法(アミノグリコシド系薬+シプロフロキサシン)とを比較した.主要評価項目は 11 日目における治療失敗とし,死亡,発熱,続発性肺ペスト,ペスト治療の変更または長期化と定義した.感染が検査で確認された患者とほぼ確実とされた患者におけるシプロフロキサシン単剤療法の非劣性は,リスク差の 95%信頼区間の上限が 15 パーセントポイントを下回る場合に示されることとした.

結 果

腺ペストが疑われ,スクリーニングを受けた 933 例のうち,450 例が登録され無作為化された.220 例(各群 110 例)で感染が確認され,2 例(各群 1 例)はほぼ確実とされた.無作為化された患者の 53.2%が男性で,年齢中央値は 14 歳(範囲 2~72)であった.シプロフロキサシン単剤療法は,アミノグリコシド系薬+シプロフロキサシン療法に対して非劣性であった.感染が確認された患者とほぼ確実とされた患者のうち,治療失敗は,シプロフロキサシン単剤療法群では 9.0%(111 例中 10 例),アミノグリコシド系薬+シプロフロキサシン群では 8.1%(111 例中 9 例)に発生した(差 0.9 パーセントポイント,95%信頼区間 -6.0~7.8).その他の事前に規定した解析対象集団においても,単剤療法の非劣性が一貫して示された.死亡は,シプロフロキサシン単剤療法群では 5 例,アミノグリコシド系薬+シプロフロキサシン群では 4 例発生し,続発性肺ペストは各群 3 例発生した.感染が確認された患者とほぼ確実とされた患者における有害事象の発現率は 2 群で同程度であり(シプロフロキサシン単剤療法群 18.0%,アミノグリコシド系薬+シプロフロキサシン群 18.9%),重篤な有害事象はそれぞれ 7.2%と 5.4%に発現した.

結 論

腺ペスト患者の治療において,10 日間の経口シプロフロキサシン単剤療法は,アミノグリコシド系薬とシプロフロキサシンの逐次併用療法に対して非劣性であった.(英国外務・英連邦・開発省,英国医学研究評議会の研究助成金 Wellcome から研究助成を受けた.IMASOY 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04110340)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 544 - 55. )