ESR1 変異が出現した進行乳癌に対する一次治療としてのカミゼストラント
First-Line Camizestrant for Emerging ESR1-Mutated Advanced Breast Cancer
F.-C. Bidard and Others
ESR1 変異は,進行乳癌の治療であるアロマターゼ阻害薬+サイクリン依存性キナーゼ 4 および 6(CDK4/6)阻害薬に対する獲得耐性機序としてもっとも頻度が高い.次世代の選択的エストロゲン受容体(ER)分解薬であり,ER 完全拮抗薬であるカミゼストラント(camizestrant)は,ER 陽性進行乳癌に対して抗腫瘍活性を示している.
ER 陽性ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性の進行乳癌患者を対象として,2~3 ヵ月に 1 回,血中循環腫瘍 DNA(ctDNA)中の ESR1 変異を検索した.全例が,アロマターゼ阻害薬+CDK4/6 阻害薬(パルボシクリブ,リボシクリブ [ribociclib],アベマシクリブのいずれか)による一次治療を 6 ヵ月以上受けていた.ESR1 変異が発見され,画像上の進行を認めない患者を,CDK4/6 阻害薬を継続しながら,アロマターゼ阻害薬の代わりにプラセボを投与し,カミゼストラント(75 mg を 1 日 1 回)に切り替える群と,アロマターゼ阻害薬+CDK4/6 阻害薬を継続しながら,カミゼストラントの代わりにプラセボを投与する群に,1:1 の割合で割り付けた.主要評価項目は,試験担当医師が評価した無増悪生存とした.
3,256 例が ESR1 変異の検査を受けた.適格であった 315 例が,カミゼストラントに切り替える群(157 例)と,アロマターゼ阻害薬を継続する群(158 例)に割り付けられた.追跡期間中央値 12.6 ヵ月の時点での中間解析では,無増悪生存期間中央値はカミゼストラント群 16.0 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 12.7~18.2),アロマターゼ阻害薬群 9.2 ヵ月(95% CI 7.2~9.5)であった(進行または死亡のハザード比 0.44,95% CI 0.31~0.60,P<0.0001).患者報告による全般的健康状態および QOL が悪化するまでの期間の中央値は,カミゼストラント群 21.0 ヵ月,アロマターゼ阻害薬群 6.4 ヵ月であった(ハザード比 0.54,95% CI 0.34~0.84).有害事象による中止の頻度は,カミゼストラント群 1.3%,アロマターゼ阻害薬群 1.9%であった.
ER 陽性 HER2 陰性進行乳癌の一次治療中に ESR1 変異が出現した患者において,CDK4/6 阻害薬を継続しながらアロマターゼ阻害薬をカミゼストラントに切り替えた場合,CDK4/6 阻害薬とアロマターゼ阻害薬の併用を継続した場合よりも,無増悪生存期間が有意に長かった.(アストラゼネカ社から研究助成を受けた.SERENA-6 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04964934)