August 14, 2025 Vol. 393 No. 7
発症前の脊髄性筋萎縮症に対するリスジプラム
Risdiplam in Presymptomatic Spinal Muscular Atrophy
R.S. Finkel and Others
経口のメッセンジャー RNA 前駆体スプライシング修飾薬であるリスジプラムは,有症状の脊髄性筋萎縮症(SMA)患者に対する有効な治療薬である.発症前の SMA に対するリスジプラムの安全性と有効性は明らかにされていない.
遺伝学的に SMA と診断されたが,SMA を強く示唆する臨床徴候・症状のない生後 1 日(出生時)~42 日の乳児に,リスジプラムを毎日経口投与(用量を 0.2 mg/kg 体重に調節)する非盲検試験を行った.主要転帰は 12 ヵ月の時点での支持なし座位の獲得とし,SMN2 のコピー数が 2 で,ベースライン時の尺骨神経複合筋活動電位(CMAP)の振幅が 1.5 mV 以上である乳児を対象に評価した.自然歴研究では,SMN2 のコピー数が 2 で,未治療の SMA 患児の大多数は,重症 SMA の表現型(1 型)をとり,独座は不可能で,永続的な人工呼吸管理と摂食支援を受けるか,生後 13 ヵ月までに死亡することが示されている.24 ヵ月間評価した副次的転帰は,生存,人工呼吸管理,運動発達指標,臨床症状を伴った SMA の発症,摂食,成長などであった.
SMN2 のコピー数が 2,3,4 以上の乳児を計 26 例登録した.12 ヵ月間の治療後,21 例(81%)は支持なしで 30 秒間の座位保持が可能であり,14 例(54%)は起立可能であり,11 例(42%)は独歩可能であった.SMN2 のコピー数が 2 で,ベースライン時の尺骨神経 CMAP の振幅が 1.5 mV 以上であった 5 例のうち,4 例(80%,95%信頼区間 28~100)は支持なしで 5 秒以上の座位保持が可能であった.12 ヵ月の時点での受診後,3 例が,親または介護者の希望で試験参加を中断した.24 ヵ月間の治療を完了した 23 例全例が,永続的な人工呼吸管理や摂食支援を受けることなく生存していた.24 ヵ月間に,7 例で 9 件の治療関連有害事象が報告されたが,いずれも重篤ではなかった.
遺伝学的に SMA と診断された生後 6 週までの乳児が,臨床徴候・症状が出現する前にリスジプラムによる治療を受けた場合,12 ヵ月の時点と 24 ヵ月の時点での機能転帰および生存転帰が,自然歴研究の未治療の患児よりも良好であると思われた.SMA を,発症前にリスジプラムで治療することの相対的有効性と安全性をさらに理解するためには,より大規模でより長期の追跡を行う,対照を設定した試験が必要である.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から研究助成を受けた.RAINBOWFISH 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03779334)