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August 14, 2025 Vol. 393 No. 7

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病院全体での乳酸リンゲル液使用と生理食塩水使用とを比較するクロスオーバー試験
A Crossover Trial of Hospital-Wide Lactated Ringer’s Solution versus Normal Saline

L. McIntyre and Others

背景

ルーチンの輸液に乳酸リンゲル液を使用した場合,生理食塩水よりも臨床的に優れているかは明らかでない.

方 法

非盲検 2 期間 2 順序横断的クラスター無作為化クロスオーバー試験で,カナダ・オンタリオ州の 7 病院を,期間 1 の 12 週間に,病院全体で乳酸リンゲル液を使用する群と,生理食塩水を使用する群に割り付けた.ウォッシュアウト期間後,期間 2 の 12 週間には,各病院は,もう一方の輸液製剤に切り替えた.主要転帰は,指標入院後 90 日以内の死亡と再入院の複合とした.副次的転帰は,主要転帰の各項目のほか,入院期間,指標入院後 90 日以内の透析開始,指標入院後 90 日以内の救急部受診,自宅以外の施設への退院とした.転帰に関するデータは,保健行政データベースから取得した.解析は病院単位で実施し,主要な推定対象(estimand)は,すべての参加病院で平均した,生理食塩水と比較した乳酸リンゲル液使用の効果とした.

結 果

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックにより試験が中断される前に,7 病院が各 12 週の 2 期間を完了した.主要転帰に関するデータは,適格患者 43,626 例から得られた.指標入院後 90 日以内の死亡と再入院の複合の発生率の平均(±SD)は,乳酸リンゲル液群で 20.3±3.5%,生理食塩水群で 21.4±3.3%であった(補正後の差 -0.53 パーセントポイント,95%信頼区間 -1.85~0.79,P=0.35).すべての副次的転帰の結果は,主要転帰の結果と一致していた.重篤な有害事象は報告されなかった.

結 論

輸液には生理食塩水ではなく乳酸リンゲル液を使用するという病院全体の方針により,指標入院後 90 日以内の死亡と再入院の発生率が有意に低くなることはなかった.(カナダ健康研究所,オタワ病院学術医療機構から研究助成を受けた.FLUID 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04512950)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 660 - 70. )