The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み
  • 目 次
  • This Week at NEJM.org

    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

April 22, 2004
Vol. 350 No. 17

ORIGINAL ARTICLE

  • 肺腺癌完全切除後のテガフール・ウラシル術後補助化学療法
    Adjuvant Chemotherapy with Uracil -Tegafur for Resected Adenocarcinoma of the Lung

    肺腺癌完全切除後のテガフール・ウラシル術後補助化学療法

    この無作為試験では,早期肺腺癌に対するテガフール・ウラシル(UFT)術後補助化学療法と経過観察とを比較した.腫瘍の直径が 2 cm 以下の患者では差はみられなかったが,直径 2 cm を超える腫瘍を有する患者の全生存は,UFT により向上した.
    テガフールはプロドラッグであり,肝臓でフルオロウラシルに変換される.UFT には副作用がほとんどなく,最長 2 年間の連日投与が可能である.早期肺腺癌患者において UFT 術後補助化学療法は有益であることから,早期肺腺癌以外への UFT の使用がすすむかもしれない.

  • 心停止を起した小児におけるエピネフリン
    Epinephrine in Children with Cardiac Arrest

    エピネフリンは,心停止から蘇生させるために日常的に使用されている.小児の心停止に関するこの試験では,蘇生の失敗に対する救済療法として,標準用量エピネフリン(0.01 mg/kg 体重)と高用量エピネフリン(0.1 mg/kg 体重)を比較した.いずれの転帰評価項目についても,2 投与量のあいだに有意差は認められなかった.
    高用量エピネフリンは,心停止を起した小児の救済療法として推奨できない.

  • SARS の空気感染を示す証拠
    Evidence of Airborne Transmission of SARS

    SARS の空気感染を示す証拠

    この解析では,香港のアモイガーデン団地で起った重症急性呼吸器症候群(SARS)の大規模集団発生について,推定されるウイルスの空気感染をモデル化するために,詳細な気流動態に関する研究が用いられた.症例の空間的分布は,1 例の発端患者が感染源であり,ウイルス含有エアロゾルによって感染が拡大したという仮説を支持している.
    この解析から,空気感染が主な感染様式であるという強力な証拠が得られた.この結論は,公衆衛生上の施策に影響を与えるであろう.

BRIEF REPORT

  • 実験室で感染した SARS 症例
    A Case of Laboratory-Acquired SARS

    この報告は,2003 年 9 月に,発熱と呼吸器症状から重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに感染したと診断された,シンガポールで微生物学を専攻している大学院生について述べている.この学生は,西ナイルウイルスの入ったバイアルを用いて研究を行っていたが,疫学調査により,そのバイアルが SARS ウイルスに汚染されていたことが判明した.
    この症例報告は,感染性の高い微生物を用いて研究を行う実験室では,厳重な予防措置と不断の警戒が必要であることを強調している.

CLINICAL PRACTICE

  • 無症候性の原発性副甲状腺機能亢進症
    Asymptomatic Primary Hyperparathyroidism

    60 歳の女性で,偶然,カルシウム濃度が 10.8 mg/dL(正常範囲 8.4~10.2 mg/dL)であることがわかった.副甲状腺ホルモン濃度は 84 pg/mL(正常範囲 10~65 pg/mL)である.女性には腎臓結石および骨折の既往はなく,体調もよい.また,尿中のカルシウム排泄は正常である.骨密度は,腰椎と股関節部では最大骨量の 0.5 SD 以内で,前腕では最大骨量を 1.0 SD 下回る.この女性をどのように管理すべきであろうか?

MEDICAL PROGRESS

  • 小児の緩和ケア
    Pediatric Palliative Care

    米国では毎年 50 万人の小児が,生命を脅かす病気と戦っている.このような小児とその家族には,包括的で思いやりがあり,発達上適切な緩和ケアが必要である.この総説は,治療と治癒という目標の接点にあり,QOL の改善に役立つであろう,小児の緩和ケアについて述べている.

CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL

  • 広範な皮膚病変,血小板減少,および貧血を呈する新生女児
    A Newborn Girl with a Large Cuta- neous Lesion, Thrombocytopenia, and Anemia

    女児が,体幹の大部分に広範な暗赤色の皮膚病変を呈して出生した.血小板輸血後,病変は著しく拡大した.

HEALTH POLICY REPORT

  • 医師の供給に関する論争
    The Physician-Supply Debate

    この報告では,医師の供給を予測し管理しようとした前世紀における取り組みを概説し,現在専門家のあいだで起っている論争を検討している.専門家らは,今後 20 年間に必要とされる医師の数について,広い範囲の予測値を出している.米国では医師が大幅に過剰になると考える専門家もいれば,大幅に不足すると予測する専門家もいる.米国で必要とされる医師の数について意見が一致しない限り,医師の供給を管理するための連邦政府の新たな政策は望めないであろう.