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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

June 3, 2004
Vol. 350 No. 23

ORIGINAL ARTICLE

  • 転移性大腸癌に対するベバシズマブ,イリノテカン,フルオロウラシル,ロイコボリン
    Bevacizumab, Irinotecan, Fluorouracil, and Leucovorin for Metastatic Colorectal Cancer

    ベバシズマブは,血管内皮増殖因子 (VEGF)に対するヒト化モノクローナル抗体である.併用化学療法+ベバシズマブは,転移性大腸癌の治療において,併用化学療法単独よりも優れていた.
    VEGF は,腫瘍増殖の重要な要素である血管新生を促進する.この研究から,大腸癌患者に行う化学療法の有効性が,VEGF の阻害によって高まるという確証が得られた.

  • 結腸癌に対する補助療法としてのオキサリプラチン,フルオロウラシル,ロイコボリン
    Oxaliplatin, Fluorouracil, and Leucovorin as Adjuvant Treatment for Colon Cancer

    病期 II 期および III 期の結腸癌に対する補助療法(術後)に関するこの大規模多施設共同試験では,オキサリプラチン,フルオロウラシル,ロイコボリンの組み合せは,フルオロウラシル+ロイコボリンよりも優れていた.
    この研究は,病期 III 期の結腸癌に対する標準的な補助療法,フルオロウラシル+ロイコボリンにオキサリプラチンを追加することによって,利益が得られることを示している.病期 II 期の結腸癌患者全例が補助化学療法を受けるべきかどうかは,まだ未解決な問題である.

  • トロントにおける SARS 集団発生の抑制
    Controlling the Outbreak of SARS in Toronto

    2003 年,アジア圏外で最大の重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生がトロントで発生した.この報告は,感染の可能性があった 2,132 例と隔離を要した 23,103 人の接触者に関する,トロント公衆衛生局が行った包括的調査データの概要を述べている.この集団発生における SARS の確定例 225 例は,主に病院内および患者の家庭内に限られた.
    この集団発生から得られた教訓は,今後 SARS が集団発生したさいに,公衆衛生当局が取るべき対応の指針として役立つであろう.トロントでは,保健当局が SARS 1 症例につき可能性のある症例を 8 例調査した.トロント公衆衛生局の SARS ホットラインには,30 万件以上の電話が寄せられた.

SPECIAL ARTICLE

  • 小児および青年における肥満と代謝症候群
    Obesity and the Metabolic Syndrome in Children and Adolescents

    小児および青年における肥満と代謝症候群

    小児期の肥満の割合と程度は,著しく増加している.研究者らは,小児と青年の大規模な多人種・多民族コホートを対象に,肥満の程度が代謝症候群の有病率に及ぼす影響と,代謝症候群とインスリン抵抗性,C 反応性蛋白濃度,アディポネクチン濃度との関係について検討した.
    代謝症候群の有病率は,肥満の小児と青年で高く,肥満の悪化に伴い上昇する.このような青少年では,有害な心血管系の転帰のリスクが上昇していることを示すバイオマーカーがすでに存在している.

MEDICAL PROGRESS

  • 遺伝性ヘモクロマトーシス
    Hereditary Hemochromatosis

    長年にわたり,遺伝性ヘモクロマトーシスは,糖尿病,皮膚への青銅色の色素沈着,肝硬変などの典型的な症状を特徴とする,臨床的・遺伝的に特異な疾患単位とみなされていた.1996 年に「ヘモクロマトーシス遺伝子」 HFE が同定されたことが報告され,それ以降,その他いくつかの鉄代謝遺伝子が同定されている.この論文では,遺伝性の鉄過剰症に関する最近の知見とその管理について概説している.
    遺伝性ヘモクロマトーシスが単一遺伝子疾患であるという考えは,変異に関連する同様の表現型が,少なくとも 4 つの異なる鉄代謝遺伝子で同定されたことによって完全に否定された.

CLINICAL PRACTICE

  • 大腸癌の根治治療後の観察計画
    Surveillance Strategies after Curative Treatment of Colorectal Cancer

    63 歳の男性が T3N0M0,病期 II 期の上行結腸腺癌の完全切除を受けた.補助療法は計画されていない.大腸癌の家族歴はない.この男性の経過観察をどのように行うべきであろうか?

CLINICAL PROBLEM-SOLVING

  • 忘れられているが,なくなってはいない
    Forgotten but Not Gone

    74 歳の男性が,錯乱し,動けなくなっていたところを自宅で発見され,救急診療部に運び込まれた.患者は,居住用ホテルで暮らしており,それまでは健康で社交的であった.男性の友人は,男性を 3 日間見かけなかったため部屋に入り,排泄物にまみれて床に横たわっている男性を発見した.患者は会話はできたが,錯乱していた.

SOUNDING BOARD

  • 公に対する説明責任における妥協点
    A Middle Ground on Public Accountability

    この“Sounding Board”の論文では,医師と病院に対する公の「成績評価」に関する議論について述べている.医療提供者は,質を基準とした評価は,誤解を招く恐れのある不正確なデータに基づいていることが多いと主張している.一方,支払い者は,たとえ不完全なものであっても,医師と病院の能力に関する情報は,すべて患者に役立つと主張している.著者らは,医療提供者と支払い者が,ケアの質を評価し報告するための,よりよいシステムの開発に向けて協力すべきであると考えている.