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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
March 24, 2005
Vol. 352 No. 12
ORIGINAL ARTICLE
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心筋梗塞における血栓溶解療法とクロピドグレル
Clopidogrel with Fibrinolysis in Myocardial Infarction急性心筋梗塞では,梗塞責任動脈内で再灌流を得るために,血栓溶解薬,ヘパリン,アスピリンの併用投与で治療が行われることが多い.しかし,この治療を行っても,再灌流が成功しなかったり再閉塞が起ったりする患者がいる.このレジメンに抗血小板薬であるクロピドグレルを追加したところ,出血性合併症を有意に増加させることなく,再灌流率が大きく改善した.この研究結果は,急性心筋梗塞患者に対する再灌流療法のプロトコールについて,再考を促すものとなるであろう.
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子供を亡くした親の精神障害
Mental Illness after Parental Bereavementデンマークの全国登録を利用したこの大規模研究では,子供を亡くした親では,精神障害による初回入院の相対リスクが,子供を亡くしていない親よりも有意に高いことが明らかにされた.また,子供を亡くした母親では,子供を亡くした父親よりも入院のリスクが高かった.
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局所リンパ腫に対する化学療法単独による治療
Chemotherapy Alone for Localized Lymphoma60 歳未満の局所進行性リンパ腫患者を対象とした,治療に関するこの大規模試験では,強化化学療法と,化学療法+罹患局所放射線療法とを比較した.全生存率と無病生存率は,強化化学療法単独でより優れていた.
B 細胞性リンパ腫の治療は絶えず変化している.B 細胞性リンパ腫の化学療法に関する試験は,抗 B 細胞モノクローナル抗体であるリツキシマブを含んでいないため,時代遅れなのであろうか? それについては確信をもてないが,強化化学療法単独での 5 年全生存率が 90%であることを考えると,大きく改善する余地はほとんどない. -
閉塞性睡眠時無呼吸における心臓性突然死
Sudden Death from Cardiac Causes in Obstructive Sleep Apnea心臓性突然死のリスクは午前 6 時から正午にもっとも高く,午前 0 時から午前 6 時にもっとも低い.この研究では,閉塞性睡眠時無呼吸患者ではこのパターンが変化していることが明らかにされた.これらの患者の心臓性突然死のリスクは,午前 0 時から午前 6 時の時間帯に,その他の時間帯よりも高かった.このリスクの増大は,この時間帯に無呼吸発作および呼吸低下の発生率がより高いことに起因している可能性がある.
CLINICAL PRACTICE
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百日咳 ― 罹るのは小児だけではない
Pertussis ― Not Just for Kids45 歳の女性が,6 週間前に喉のいがらっぽさに気付いた.現在ではそれが悪化し,発作性の激しい咳嗽を 1 日に 20 回以上繰り返している.咳嗽発作は夜間に悪化し,吐き気や嘔吐を伴うこともある.女性の青年期の息子とその友人数名には,女性に症状が発現する数週間前に類似した症状がみられ,現在も咳嗽が続いている.百日咳の可能性について,この患者をどのように評価すべきであろうか? 治療は行うべきであろうか? もし行うとすればどのような方法で行うべきであろうか? また,この疾患は予防できたのであろうか?
MEDICAL PROGRESS
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多嚢胞性卵巣症候群
Polycystic Ovary Syndrome多嚢胞性卵巣症候群は,女性の内分泌疾患でもっとも多くみられる疾患の 1 つである.この症候群には,多数の要素――生殖,代謝,心血管――があり,患者の全生涯を通じて健康に影響を及ぼす.この総説では,この病態の診断,原因,治療に関する最近の概念に焦点を当てている.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
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急性呼吸不全を呈する男性
A Man with Acute Respiratory Failure67 歳の男性が急性呼吸不全で入院した.男性に喫煙歴はなく,旅行歴もなかったが,最近鳥糞に触れたことがあった.培養と血清学的検査の結果は陰性であった.抗菌薬治療と呼吸補助により,男性の症状は 48 時間で急速に改善した.退院から 3 日後,湯につかった直後に症状が再発した.地域の病院へ入院後,症状は再び急速に緩和した.
SOUNDING BOARD
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医療バウチャー ― 国民皆保険の提案
Health Care Vouchers - A Proposal for Universal Coverageこの論文で Emanuel 氏と Fuchs 氏は,国民皆医療のバウチャー制度に関する提案について概説している.米国民には,各自が選んだ民間の健康保険から給付を受けるためのバウチャーが交付されるであろう.このシステムは,メディケイド,メディケア,雇用者による医療保険の代りになると考えられる.著者らは,バウチャーの資金には国の付加価値税(VAT)を充てることを提案しており,そうすることで費用を抑制できると主張している.その理由は,医療支出の増加には増税に対する国民の同意が必要となるためである.
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われわれは,医療の広範な利用 機会を本当に求めているのか?
Do We Really Want Broad Access to Health Care?米国では,約 4,500 万人が医療保険に加入していない.Mongan 氏と Lee 氏は,米国民の大半が,国民皆医療保険制度に賛成していると述べているが,一般米国民は,医療保険料の支払いに積極的ではないとしている.また,著者らは,医療提供者が指導的役割を任うことを強く主張し,すべての人に医療保険を提供するために,必要に応じて増税することを主張している.