LDL 受容体関連蛋白 5 の変異による高い骨密度
High Bone Density Due to a Mutation in LDL-Receptor–Related Protein 5
L.M. BOYDEN AND OTHERS
骨粗鬆症は大部分が原因不明で,公衆衛生上の重大な問題である.Wnt シグナル伝達経路に作用する低比重リポ蛋白受容体関連蛋白 5(LRP5)遺伝子の機能喪失型変異が骨粗鬆症・偽神経膠腫の原因であるとされている.
高い骨密度,広くて深い下顎骨,および口蓋隆起が特徴の常染色体優性の症候群を有する 1 家系について遺伝学的・生化学的解析を行った.
遺伝子解析では,LRP5 を含む領域である 11q12~13 染色体と症候群の関連を明らかにした(関連確率 100 万以上 対 1).その家系の罹患者には,この遺伝子に変異があり,コドン 171 のグリシンがバリンに置換していた(LRP5V171).この変異は家族の遺伝形質とは関連がなく,対照被験者には存在しなかった.正常なグリシンは,ショウジョウバエからヒトまで高度に保存されたいわゆるプロペラ構造に存在する.罹患者では骨吸収マーカーは正常であったが,オステオカルシンのような骨形成マーカーは顕著に増加した.また,発生蛋白 Wnt によるシグナルの標的として知られるフィブロネクチン濃度も上昇していた.in vitro における研究では,別の蛋白である Dickkopf-1(Dkk-1)による Wnt シグナルの正常な抑制が LRP5V171 の存在下では欠如しており,このため Wnt 活性が阻害されることなく,結果としてシグナルが増加することが示された.
LRP5V171 変異は,Wnt 経路の正常な拮抗物質の作用を減弱し,その結果 Wnt シグナルを増大させることで肥厚した下顎骨と口蓋隆起を伴う高い骨密度を起す.これらの知見は,高骨量における変化した LRP5 機能の役割を説明し,Dkk を骨粗鬆症の予防または治療のためのターゲットとしての可能性を示している.