腎血管性高血圧症における血管内皮機能および酸化ストレス
Endothelial Function and Oxidative Stress in Renovascular Hypertension
Y. HIGASHI AND OTHERS
腎血管性高血圧症は,レニン-アンジオテンシン系を活性化し,酸化ストレスの増加につながると報告されている.われわれは,腎動脈血管形成術が,酸化ストレスを減少させることを通じて,腎血管性高血圧症患者の血管内皮の機能不全を改善するかどうかを検討した.
われわれは,腎血管性高血圧症患者 15 例および年齢と性別が適合した高血圧症を有さない対照被験者 15 例を対象に,腎動脈血管形成術の前後における前腕血流量のアセチルコリン(血管内皮依存性血管拡張薬)と硝酸イソソルビド(血管内皮非依存性血管拡張薬)に対する反応を評価した.前腕血流量は,ストレンゲージ式プレチスモグラフで測定した.
アセチルコリンに反応した前腕血流量は,腎血管性高血圧症群のほうが対照群と比べて少なかったが,硝酸イソソルビドに反応した前腕血流量は両群で同様であった.血管形成術は,収縮期および拡張期の血圧を下げ,前腕の血管抵抗性を低下させ,酸化ストレスの指標である 8 -ヒドロキシ- 2' -デオキシグアノシンの尿中排泄および血清中マロンジアルデヒド修飾低比重リポ蛋白(LDL)を減少させた.血管形成術後,アセチルコリンに反応した前腕血流量の平均(±SD)は腎血管性高血圧症患者で増加した(100 mL 当たり 19.3±6.8 mL/分 対 29.6±7.1 mL/分,P=0.002).アセチルコリンに反応した最大前腕血流量の増加は,8 -ヒドロキシ- 2' -デオキシグアノシンの尿中排泄(r=-0.51,P=0.004)および血清中マロンジアルデヒド修飾 LDL(r=-0.39,P=0.02)の減少と有意に相関していた.アスコルビン酸(ビタミン C)の同時注入は,前腕血流量のアセチルコリンに対する反応を血管形成術前には増大させたが(P<0.001),血管形成術後には増大させなかった.
これらの知見から,腎血管性高血圧症患者における過剰な酸化ストレスは,少なくとも部分的に血管内皮依存性血管拡張の障害に関与していることが示唆される.