March 14, 2002 Vol. 346 No. 11
HIV 感染患者におけるヌクレオシド毒性のマーカーとしてのミトコンドリア DNA の変化
Changes in Mitochondrial DNA as a Marker of Nucleoside Toxicity in HIV-Infected Patients
H.C.F. COTE AND OTHERS
ヌクレオシドアナログは,ヒト DNA ポリメラーゼ γ を阻害することによりミトコンドリアに毒性作用を引き起す可能性がある.この毒性作用は,血清乳酸量の増加から,致死の可能性のある乳酸アシドーシスにまでに及ぶ場合もある.われわれは,症候性ヌクレオシド誘発性高乳酸血症患者の末梢血細胞における,核内 DNA に比較したミトコンドリア DNA の変化を検討した.
全 DNA は血液細胞から抽出した.核内遺伝子とミトコンドリア遺伝子はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法で定量した.3 群を検討した:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)非感染対照群 24 例,抗レトロウイルス薬治療を受けたことのない無症候性 HIV 感染患者群 47 例,抗レトロウイルス薬を受け,症候性高乳酸血症を呈した HIV 感染患者 8 例.最後の群の患者については,抗レトロウイルス療法開始前,治療中,治療後にわたり経時的に検討した.
症候性高乳酸血症は,ミトコンドリア DNA の核内 DNA に対する比の顕著な減少と関連しており,この比は,治療期間中,HIV 非感染対照群での比より平均 68%低く,抗レトロウイルス薬治療を受けたことのない HIV 感染無症候性患者での比より平均 43%低かった.抗レトロウイルス療法の中断後,ミトコンドリア DNA の核内 DNA に対する比に統計学的に有意な増加がみられた(p=0.02).経時的に追跡した患者において,ミトコンドリア DNA の減少は静脈内乳酸量の増加に先行した.
ミトコンドリア DNA 量は,症候性ヌクレオシド関連高乳酸血症患者において有意に減少し,この作用は治療中断により回復する.