October 31, 2002 Vol. 347 No. 18
心不全治療に対するジゴキシンの効果における性別による相違
Sex-Based Differences in the Effect of Digoxin for the Treatment of Heart Failure
S.S. RATHORE, Y. WANG, AND H.M. KRUMHOLZ
ジギタリス研究グループ試験は,ジゴキシンによる治療が,心不全に左室収縮機能低下を併発した患者において入院率をわずかに減少させても,全死亡率は低下させないと報告した.心不全の疫学的特徴,原因および予後は男女で異なるにもかかわらず,ジゴキシン効果の性別に基づく相違は評価されていなかった.
ジギタリス研究グループ試験に参加した患者 6,800 例について,ジゴキシン療法の効果に性別に基づく相違があるのかどうかを評価するために,事後的なサブグループ解析を行った.主要エンドポイントである全死因死亡に関して,性別とジゴキシン療法のあいだに相互作用があるかを,不均一性に関する Mantel-Haenszel 検定と,人口学的および臨床的変数で補正した多変量 Cox 比例ハザードモデルを用いて評価した.
ジゴキシンの全死因死亡率に与える影響では,男女間に 5.8%の絶対差(95%信頼区間 0.5~11.1)があった(相互作用において P=0.034).具体的には,ジゴキシンに無作為に割付けられた女性は,プラセボに割付けられた女性よりも死亡率が高かった(33.1% 対 28.9%;絶対差 4.2%,95%信頼区間-0.5~8.8).これに対して,ジゴキシンに無作為に割付けられた男性とプラセボに割付けられた男性では,死亡率はほぼ同等であった(35.2% 対 36.9%;絶対差-1.6%,95%信頼区間-4.2~1.0).多変量解析では,ジゴキシンは,女性において有意により高い死亡リスクと関連していたが(プラセボと比較した補正ハザード比 1.23;95%信頼区 1.02~1.47),男性においては有意な影響はみられなかった(補正ハザード比 0.93;95%信頼区間 0.85~1.02;相互作用において P=0.014).
ジゴキシン療法の効果は,男性と女性では異なっている.ジゴキシン療法は,左室収縮機能低下を併発している心不全の女性において,全死因死亡のリスクの増加と関連しているが,男性では関連していない.