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November 28, 2002 Vol. 347 No. 22

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非アルツハイマー型痴呆の予測因子としての歩行異常
Abnormality of Gait as a Predictor of Non-Alzheimer's Dementia

J. VERGHESE AND OTHERS

背景

歩行に影響を及ぼす神経学的異常は,さまざまなタイプの非アルツハイマー型痴呆で早期にみられるが,痴呆の発症を予測するうえでの有用性は明らかではない.

方 法

ベースライン時に 75 歳を超えていて,地域社会で生活している痴呆でない 422 例を対象に前向き研究を行い,ベースライン時の神経学的歩行状態と痴呆の発症との関係を解析した.交絡の可能性がある人口統計学的変数,医学的変数および認知変数を補正し,Cox の比例ハザード回帰分析を用いてハザード比を算出した.

結 果

研究参加時に,対象者 85 例は,以下の種類の神経学的歩行異常を有していた:その内訳は,不安定歩行(31 例),正面歩行(12 例),片麻痺性歩行(11 例),神経障害性歩行(11 例),失調性歩行(10 例),パーキンソン症候群性歩行(8 例)および痙性歩行(2 例)であった.追跡期間中(追跡期間の中央値 6.6 年)に新たに診断した痴呆の症例は 125 例で,そのうちの 70 例はアルツハイマー病であり,55 例は非アルツハイマー型痴呆であった(そのうちの 47 例は血管性痴呆であり,8 例は別の型の痴呆であった).神経学的歩行異常の対象者で,痴呆発症に対するリスクがより大きかった(ハザード比 1.96 [95%信頼区間 1.30~2.96]).これら対象者では,非アルツハイマー型痴呆のリスクは増大したが(ハザード比 3.51 [95%信頼区間 1.98~6.24]),アルツハイマー型痴呆のリスクは増大しなかった(ハザード比 1.07 [ 95%信頼区間 0.57~2.02]).非アルツハイマー型痴呆では,歩行異常が血管性痴呆の発症を予測した(ハザード 比 3.46 [95%信頼区間 1.86~6.42]).歩行異常の種類では,正面歩行(ハザード比 4.32)や片麻痺性歩行(ハザード比 13.13)と同様に,不安定歩行(ハザード比 2.61)が血管性痴呆を予測した.

結 論

ベースライン時に痴呆でない高齢者における神経学的歩行異常の存在は,痴呆,とくに非アルツハイマー型痴呆の発症リスクの有意な予測因子である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 347 : 1761 - 8. )