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July 18, 2002 Vol. 347 No. 3

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Toll 様受容体 4 の多型とアテローム発生
Toll-like Receptor 4 Polymorphisms and Atherogenesis

S. KIECHL AND OTHERS

背景

細菌性病原体に対し顕著な炎症反応を起す能力は,先天免疫防御には有利であるが,アテローム性動脈硬化症のリスク上昇の引き金となる可能性がある.われわれは,最近発見された,細菌リポポリサッカライドに惹起される炎症反応に差異を与える Toll 様受容体 4(TLR4)の遺伝的変異体が,アテローム性動脈硬化症の発症と関連しているかどうかを検討した.

方 法

ブルネック(イタリア)試験の 5 年追跡調査の一環として,試験コホートのうちの 810 例について TLR4 多型である Asp299Gly および Thr399Ile を調査した.頸動脈アテローム性動脈硬化症の程度と進行度は,高解像度複式超音波検査法で評価した.

結 果

野生型 TLR4 を有する被験者と比較して,Asp299Gly の TLR4 対立遺伝子を有する被験者 55 例では,インターロイキン 6 やフィブリノゲンなどの,特定の炎症性サイトカイン,急性期応答物質,および可溶性接着分子の濃度が低かった.これらの被験者は,重篤な細菌感染によりかかりやすいことが明らかになったが,頸動脈アテローム性動脈硬化症のリスクは低く(オッズ比 0.54;95%信頼区間 0.32~0.98;P=0.05),総頸動脈の内膜中膜複合体厚は薄かった(回帰係数 -0.07;95%信頼区間 -0.12~-0.02;P=0.01).

結 論

Asp299Gly の TLR4 多型は,受容体のシグナル伝達を減弱させ,グラム陰性の病原体に対する炎症反応を減少させるが,アテローム性動脈硬化症のリスクの低下と関連する.この知見は,先天免疫がアテローム発生になんらかの役割を果しているかもしれないという仮説と一致する.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 347 : 185 - 92. )