米国における細菌性髄膜炎,1998~2007 年
Bacterial Meningitis in the United States, 1998–2007
M.C. Thigpen and Others
米国では,乳児用のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)b 型(Hib)結合型ワクチンが導入された 1990 年代初期に細菌性髄膜炎の発生率が 55%低下した.最近では,肺炎球菌結合型ワクチンや全妊娠女性を対象とした B 群連鎖球菌(GBS)スクリーニングなどの予防策が行われるようになり,細菌性髄膜炎の疫学がさらに変化している.
新興感染症プログラムネットワークの 8 つの監視地域の住民約 1,740 万人において 1998~2007 年に報告された細菌性髄膜炎の症例に関するデータを解析した.細菌性髄膜炎の定義は,髄膜炎の臨床診断とともに,脳脊髄液中または通常は無菌である部位に H. influenzae,肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae),GBS,リステリア菌(Listeria monocytogenes),髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のいずれかが存在することとした.
細菌性髄膜炎患者 3,188 例が同定された.転帰データが得られた 3,155 例のうち,466 例(14.8%)が死亡していた.髄膜炎の発生率は監視期間中に -31%(95%信頼区間 [CI] -33~-29)変化し,1998~99 年の人口 100,000 人あたり 2.00 件(95% CI 1.85~2.15)から,2006~07 年では人口 100,000 人あたり 1.38 件(95% CI 1.27~1.50)となった.患者の年齢中央値は,1998~99 年の 30.3 歳から,2006~07 年には 41.9 歳に上昇した(Wilcoxon の順位和検定で P<0.001).致命率に有意な変化はみられず,1998~99 年では 15.7%,2006~07 年では 14.3%であった(P=0.50).2003~07 年に報告された 1,670 件のうち,もっとも多くみられた感染菌種は S. pneumoniae(58.0%)であり,次いで GBS(18.1%),N. meningitidis(13.9%),H. influenzae(6.7%),L. monocytogenes(3.4%)であった.2003~07 年の米国における細菌性髄膜炎の年間の症例数は 4,100 例,死亡数は 500 例と推定された.
細菌性髄膜炎の発生率は 1998 年以降低下しているが,この疾患によって死亡する例は依然として多い.肺炎球菌結合型ワクチンと Hib 結合型ワクチンが乳幼児の髄膜炎リスクの減少に成功したことで,現在ではより高齢の成人が細菌性髄膜炎の負荷を負っている.(米国疾病対策予防センター新興感染症プログラムから研究助成を受けた.)