October 20, 2011 Vol. 365 No. 16
HIV-1 感染と結核に対する抗レトロウイルス療法の 開始時期
Timing of Antiretroviral Therapy for HIV-1 Infection and Tuberculosis
D.V. Havlir and Others
ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)感染患者には,結核治療中に抗レトロウイルス療法(ART)が適応となるが,患者によって免疫不全の程度が異なる中で,結核が診断された場合に ART をいつ開始すべきかは明らかにされていない.
非盲検無作為化研究において,CD4+T 細胞数 250 個/mm3 未満で,結核が疑われる HIV-1 感染患者を対象に,早期 ART(結核治療開始から 2 週間以内に開始)と,待期的 ART(結核治療開始から 8~12 週で開始)とを比較した.主要エンドポイントは,48 週の時点で生存し,新規(それまで診断されていない)後天性免疫不全症候群(AIDS)指標疾患を発症していない患者の割合とした.
ベースラインの CD4+T 細胞数中央値 77 個/mm3,HIV-1 RNA 値 5.43 log10 コピー/mL の患者 809 例を登録した.48 週までに新規 AIDS 指標疾患を発症または死亡した患者の割合は,早期 ART 群 12.9%に対し,待期的 ART 群 16.1%であった(95%信頼区間 [CI] -1.8~8.1,P=0.45).スクリーニング時の CD4+T 細胞数が 50 個/mm3 未満であった患者においては,新規 AIDS 指標疾患を発症または死亡した割合は,早期 ART 群 15.5%に対し,待期的 ART 群 26.6%であった(95% CI 1.5~20.5,P=0.02).結核関連免疫再構築症候群の発症頻度は,早期 ART 群のほうが待期的 ART 群より高かった(11% 対 5%,P=0.002).48 週の時点でのウイルス抑制率は 74%であり,2 群間に差はなかった(P=0.38).
全体では,早期に ART を開始しても,新規 AIDS 指標疾患および死亡の発生率は,待期的 ART と比較して低下しなかった.CD4+T 細胞数 50 個/mm3 未満の患者においては,ART の早期開始は新規 AIDS 指標疾患と死亡の発生率がより低いことと関連した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ACTG A5221 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00108862)