December 22, 2011 Vol. 365 No. 25
1 型糖尿病における強化療法と糸球体濾過量
Intensive Diabetes Therapy and Glomerular Filtration Rate in Type 1 Diabetes
The DCCT/EDIC Research Group
糸球体濾過量(GFR)の低下は末期腎不全をもたらし,心血管疾患と死亡のリスクが上昇する.1 型糖尿病患者は腎臓病のリスクが高いが,この集団において GFR 低下を予防することが証明されている介入法はない.
糖尿病のコントロールと合併症に関する試験(Diabetes Control and Complications Trial:DCCT)において,1 型糖尿病患者 1,441 例を,ほぼ正常範囲の血糖値を目標とする強化療法を 6.5 年間行う群と,高血糖症状の予防を目的とする従来療法を行う群のいずれかに無作為に割り付けた.その後,観察研究である糖尿病への介入と合併症に関する疫学(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications:EDIC)研究において 1,375 例を追跡した.2 つの研究期間を通じて,血清クレアチニン値を年 1 回測定した.GFR は,慢性腎臓病疫学共同研究の計算式を用いて推定した.2 研究のデータを解析し,強化療法が GFR 低下のリスクにもたらす長期的効果を検討した.GFR 低下は,追跡調査のための連続する 2 回の受診時に,推算 GFR が 60 mL/分/1.73 m2 体表面積未満であることと定義した.
2 研究を合わせて中央値 22 年の追跡期間に,GFR 低下は強化療法群 24 例,従来療法群 46 例に発生した(強化療法によるリスク低下 50%,95%信頼区間 18~69,P=0.006).このうち強化療法群の 8 例と従来療法群の 16 例に末期腎不全が発生した.従来療法と比較して,強化療法は DCCT 試験期間中は平均推算 GFR の 1.7 mL/分/1.73 m2 の低下に関連したが,EDIC 研究期間中は,GFR 低下速度がより遅いことと,平均推算 GFR の 2.5 mL/分/1.73 m2 の増加に関連した(両比較において P<0.001).GFR 低下リスクに対する強化療法の有益な効果は,糖化ヘモグロビン値またはアルブミン排泄量について補正すると完全に消失した.
1 型糖尿病の早期に強化療法を行った患者では,従来療法を行った患者と比較して,GFR 低下の長期的リスクが有意に低かった.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.DCCT/EDIC ClinicalTrials.gov 番号:NCT00360815,NCT00360893)