December 29, 2011 Vol. 365 No. 26
急性内科疾患患者における低分子ヘパリンと死亡率
Low-Molecular-Weight Heparin and Mortality in Acutely Ill Medical Patients
A.K. Kakkar and Others
血栓予防により急性内科疾患患者の静脈血栓塞栓症の発症率は低下するが,これに関連する全死因死亡率の低下は示されていない.
無作為化二重盲検プラセボ対照試験において,中国,インド,韓国,マレーシア,メキシコ,フィリピン,チュニジアの参加施設に入院している急性内科疾患患者の全死因死亡率に対する皮下エノキサパリン(40 mg/日)とプラセボの効果を比較検討した.いずれも段階的圧迫弾性ストッキングを着用している患者に 10±4 日間投与した.組入れ基準は,40 歳以上であり,かつ急性非代償性心不全,静脈血栓塞栓症の危険因子を 1 つ以上伴う重症全身感染症,活動性癌のいずれかによる入院であることとした.有効性の主要転帰は,無作為化後 30 日の時点での全死因死亡率とした.安全性の主要転帰は,投与期間中および投与終了後 48 時間以内における重大な出血の発生率とした.
8,307 例をエノキサパリン+段階的圧迫弾性ストッキング群(4,171 例)とプラセボ+段階的圧迫弾性ストッキング群(4,136 例)に無作為に割り付け,intention-to-treat 解析の対象とした.30 日の時点での全死因死亡率はエノキサパリン群 4.9%,プラセボ群 4.8%であった(リスク比 1.0,95%信頼区間 [CI] 0.8~1.2,P=0.83).重大な出血の発生率はエノキサパリン群 0.4%,プラセボ群 0.3%であった(リスク比 1.4,95% CI 0.7~3.1,P=0.35).
入院している急性内科疾患患者に対するエノキサパリンと段階的圧迫弾性ストッキングの併用は,段階的圧迫弾性ストッキング単独と比較して,全死因死亡率の低下とは関連していなかった.(Sanofi 社から研究助成を受けた.LIFENOX ClinicalTrials.gov 番号:NCT00622648)