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January 12, 2012 Vol. 366 No. 2

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HOXB13 の生殖細胞系列変異と前立腺癌リスク
Germline Mutations in HOXB13 and Prostate-Cancer Risk

C.M. Ewing and Others

背景

家族歴は前立腺癌の重要な危険因子であるが,この関連の分子的基盤はほとんど解明されていない.連鎖解析から,染色体 17q21-22 が前立腺癌感受性遺伝子座の候補として示唆されている.

方 法

候補領域との連鎖を調査するために選択した家族から,血縁関係のない前立腺癌患者 94 例を対象とし,生殖細胞系列の DNA の配列決定によって 17q21-22 領域の 200 を超える遺伝子をスクリーニングした.同定された突然変異の発生頻度を明らかにするため,家族構成員,別の発症例,対照例について検討した.

結 果

4 家族の発端者は,前立腺の発生に重要なホメオボックス転写因子遺伝子である HOXB13(rs138213197)に,まれではあるが再発性の変異(G84E)を有することが明らかとなった.これら 4 家族の DNA が得られた前立腺癌患者 18 例のすべてでこの変異が認められた.欧州人を祖先にもつ血縁関係のない前立腺癌患者では G84E 変異が 5,083 例中 72 例(1.4%)で認められたのに対し,対照例では 1,401 例中 1 例(0.1%)で(P=8.5×10-7),前立腺癌患者における変異の保有率は対照例の約 20 倍であった.この変異は,早期発症の家族性前立腺癌患者(3.1%)において,晩期発症の非家族性前立腺癌患者(0.6%)よりも有意に多く認められた(P=2.0×10-6).

結 論

この新規 HOXB13 G84E 変異体は,遺伝性前立腺癌のリスクの有意な上昇と関連している.前立腺癌でこの変異体に起因するのはごく一部であるが,この知見は前立腺癌のリスク評価に影響を及ぼし,この頻度の高い癌の機序に新たな洞察をもたらす可能性がある.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 141 - 9. )