中国における薬剤耐性結核に関する全国調査
National Survey of Drug-Resistant Tuberculosis in China
Y. Zhao and Others
中国での薬剤耐性結核の流行に関して得られている情報は,地方・地域での調査に基づいたものである.われわれは 2007 年に,中国における薬剤耐性結核に関する全国調査を実施した.
公衆衛生システムにおける結核症例のクラスター無作為化抽出と,一次抗結核薬であるイソニアジド,リファンピン,エタンブトール,ストレプトマイシン,および二次抗結核薬であるオフロキサシンとカナマイシンに対する耐性の検査により,中国における薬剤耐性を示す結核症例の割合を推定した.この調査の結果と,公表されている結核の推定発生率を用いて,薬剤耐性結核の発生率を推定した.患者との面接で得た情報を用いて,薬剤耐性に関連する要因を同定した.
結核の新規発症例 3,037 例と,治療歴のある 892 例において,多剤耐性(MDR)結核(少なくともイソニアジドとリファンピンに耐性を示した結核と定義)の発生率はそれぞれ 5.7%(95%信頼区間 [CI] 4.5~7.0),25.6%(95% CI 21.5~29.8)であった.全結核患者のうち,約 1/4 はイソニアジドとリファンピンのうちの一方または両方に耐性を示し,1/10 は MDR 結核であった.MDR 結核患者の約 8%では,超多剤耐性(XDR)結核(少なくともイソニアジド,リファンピン,オフロキサシン,カナマイシンに耐性を示した結核と定義)であった.2007 年における MDR 結核症例は 110,000 例(95% CI 97,000~130,000),XDR 結核症例は 8,200 例(95% CI 7,200~9,700)であった.MDR 結核と XDR 結核のほとんどの症例は,一次感染によるものであった.複数回の治療歴があり,最後の治療を結核専門病院で受けた患者は,MDR 結核のリスクがもっとも高かった(補正オッズ比 13.3,95% CI 3.9~46.0).治療歴のある MDR 結核患者 226 例のうち,43.8%は最後の治療を完了していなかったが,そのほとんどが病院システムで治療を受けていた.治療を完了していた患者では,公衆衛生システムで治療を受けた患者のほとんどで結核の再発がみられた.
中国では薬剤耐性結核の深刻な流行がみられる.MDR 結核は,公衆衛生システムと病院システム(とくに結核専門病院)における不適切な治療と関連している.しかし,一次感染がほとんどの症例を占めている.(中国衛生部から研究助成を受けた.)