進行癌患者に対する抗 PD-L1 抗体の安全性と活性
Safety and Activity of Anti-PD-L1 Antibody in Patients with Advanced Cancer
J.R. Brahmer and Others
T 細胞の抑制性共受容体であるプログラム死 1(PD-1)蛋白と,そのリガンドの 1 つである PD-L1 は,腫瘍細胞の宿主免疫回避機構にきわめて重要な役割を果たす.PD-1 と PD-L1 の相互作用を遮断すると,in vitro では免疫機能が高まり,前臨床モデルでは抗腫瘍活性が仲介される.
多施設共同第 1 相試験において,特定の進行癌を有する患者に,抗 PD-L1 抗体(0.3 mg/kg 体重で開始し,10 mg/kg まで漸増)を静脈内投与した.抗 PD-L1 抗体は,14 日ごとに,6 週間を 1 サイクルとして最大 16 サイクル投与するか,完全奏効が得られるか疾患進行が確認されるまで投与した.
2012 年 2 月 24 日の時点で,非小細胞肺癌患者 75 例,黒色腫患者 55 例,大腸癌患者 18 例,腎細胞癌患者 17 例,卵巣癌患者 17 例,膵癌患者 14 例,胃癌患者 7 例,乳癌患者 4 例の計 207 例が,抗 PD-L1 抗体を投与されていた.治療期間中央値は 12 週間(2~111)であった.研究者が「治療に関連する」と判断したグレード 3 または 4 の毒性作用は,9%に発生した.効果を評価しえた患者のうち,客観的奏効(完全奏効または部分奏効)が認められたのは,黒色腫患者 52 例中 9 例,腎細胞癌患者 17 例中 2 例,非小細胞肺癌患者 49 例中 5 例,卵巣癌患者 17 例中 1 例であった.1 年以上追跡しえた 16 例のうち,8 例で 1 年以上奏効が持続した.
抗体を介して PD-L1 を遮断することで,非小細胞肺癌,黒色腫,腎細胞癌などの進行例において,持続的な腫瘍縮小(客観的奏効率 6~17%)と長期の疾患安定化(24 週の時点で 12~41%)が誘導された.(Bristol-Myers Squibb 社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00729664)