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September 20, 2012 Vol. 367 No. 12

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重症患者における低血糖と死亡リスク
Hypoglycemia and Risk of Death in Critically Ill Patients

The NICE-SUGAR Study Investigators

背景

重症患者において,低血糖が死亡に結びつくかどうかは明らかにされていない.

方 法

集中治療室(ICU)の重症患者 6,026 例のうち,中等症の低血糖(血糖値 41~70 mg/dL [2.3~3.9 mmol/L])・重症低血糖(≦40 mg/dL [2.2 mmol/L])と,死亡との関連を検討した.患者は,強化血糖コントロールまたは標準血糖コントロールに無作為に割り付けられた.解析には Cox 回帰分析を用い,治療の割付けと,ベースラインおよび無作為化後の共変量について補正を行った.

結 果

追跡調査データが得られた 6,026 例のうち,中等症の低血糖を呈したのは 2,714 例(45.0%)で,うち 2,237 例(82.4%)が強化コントロール群であった(強化コントロール群 3,013 例の 74.2%).重症低血糖を呈したのは 223 例(3.7%)で,うち 208 例(93.3%)が強化コントロール群であった(強化コントロール群の 6.9%).低血糖をきたさなかった 3,089 例では 726 例(23.5%)が死亡したのに対し,中等症低血糖例 2,714 例では 774 例(28.5%),重症低血糖例 223 例では 79 例(35.4%)が死亡した.中等症または重症の低血糖患者における,低血糖をきたさなかった患者と比較した死亡の補正ハザード比は,中等症低血糖例で 1.41(95%信頼区間 [CI] 1.21~1.62;P<0.001),重症低血糖例で 2.10(95% CI 1.59~2.77;P<0.001)であった.死亡との関連が強く認められたのは,中等症低血糖が 2 日目以降も続いた患者(>1 日 対 1 日,P=0.01),血液分布異常性(血管拡張性)ショックにより死亡した患者(P<0.001),インスリン治療を受けなかったにもかかわらず重症低血糖をきたした患者(ハザード比 3.84,95% CI 2.37~6.23;P<0.001)であった.

結 論

重症患者においては,強化血糖コントロールによって中等症・重症低血糖が発生し,これらはいずれも死亡リスクの上昇に関連する.この関連は用量反応関係を示すものであり,血液分布異常性ショックによる死亡との関連がもっとも強かった.しかし,これらのデータから因果関係を証明することはできない.(オーストラリア国立保健医療研究評議会ほかから研究助成を受けた.NICE-SUGAR ClinicalTrials.gov 番号:NCT00220987)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 1108 - 18. )