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July 12, 2012 Vol. 367 No. 2

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多発性硬化症の免疫標的としてのカリウムチャネルKIR4.1
Potassium Channel KIR4.1 as an Immune Target in Multiple Sclerosis

R. Srivastava and Others

背景

多発性硬化症は中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患である.多くの所見から,多発性硬化症は自己免疫に起因することが示唆されているが,免疫反応の標的は依然として不明である.

方 法

脳組織への結合能をもつ抗体を同定するため多発性硬化症患者の血清 IgG をスクリーニングし,患者のサブグループで IgG のグリア細胞への特異的な結合を観察した.膜蛋白に着目したプロテオミクス手法を用いて,IgG 抗体の標的として ATP 感受性内向き整流性カリウムチャネル KIR4.1 を同定した.KIR4.1 が多発性硬化症の自己抗体反応の標的であることを確認し,in vivo での病原性の可能性を示すため,多面的に検証した.

結 果

抗 KIR4.1 抗体の血清中濃度は,多発性硬化症患者のほうが,他の神経疾患患者および健常人よりも高かった(両比較において P<0.001).多発性硬化症患者または他の神経疾患患者から成る,2 つの独立したグループでこの所見を再現した(両比較において P<0.001).データセットを合わせた解析では,血清抗 KIR4.1 抗体は,多発性硬化症患者 397 例中 186 例(46.9%),他の神経疾患患者 329 例中 3 例(0.9%)に認められたが,健常人 59 例には認められなかった.これらの抗体は KIR4.1 の第一細胞外ループに結合した.抗 KIR4.1 血清 IgG をマウスの大槽に注射すると,KIR4.1 の発現は大きく減少し,星状細胞におけるグリア細胞線維性酸性蛋白(glial fibrillary acidic protein)の発現が変化し,小脳の KIR4.1 発現部位において補体カスケードの活性化がもたらされた.

結 論

KIR4.1 は,多発性硬化症患者のサブグループにおける自己抗体反応の標的である.(ドイツ教育研究省,ドイツ研究振興協会から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 367 : 115 - 23. )