敗血症関連急性呼吸促迫症候群に対するロスバスタチン
Rosuvastatin for Sepsis-Associated Acute Respiratory Distress Syndrome
The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network
急性呼吸促迫症候群(ARDS)では,肺やほかの臓器の炎症が,生命に関わる臓器不全を引き起こす可能性がある.3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A 還元酵素阻害薬(スタチン)は,炎症反応を修飾することができる.先行する観察研究では,敗血症患者の臨床転帰がスタチンによって改善することが示唆された.われわれは,ロスバスタチン投与により,敗血症関連 ARDS の重症患者の臨床転帰が改善するという仮説を立てた.
多施設共同試験において,敗血症関連 ARDS 患者を,二重盲検下でロスバスタチンの経腸投与を行う群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要評価項目は,自宅退院まで,また医療施設に入所していた場合は試験 60 日目までの死亡率とした.副次的評価項目は,28 日目までの人工呼吸器を使用しなかった日数(患者が生存し自発呼吸をしていた日数)と,14 日目までの臓器不全のない日数などとした.
この試験は,予定されていた 1,000 例のうち 745 例が登録された時点で,無益性のため中止された.60 日医療施設内死亡率にも(ロスバスタチン群 28.5%,プラセボ群 24.9%,P=0.21),人工呼吸器を使用しなかった平均日数(±SD)にも(ロスバスタチン群 15.1±10.8,プラセボ群 15.1±11.0,P=0.96),群間で有意差は認められなかった.両群の人口統計学的特性と主要な生理学的特性はよく一致していた.ロスバスタチン治療は,プラセボと比較して,14 日目までの腎不全のない日数が少ないこと(10.1±5.3 対 11.0±4.7,P=0.01)と,14 日目までの肝不全のない日数が少ないこと(10.8±5.0 対 11.8±4.3,P=0.003)に関連していた.ロスバスタチンは,血清クレアチンキナーゼが正常上限の 10 倍を超える確率の上昇に関連しなかった.
ロスバスタチン治療により,敗血症関連 ARDS 患者の臨床転帰は改善せず,肝機能不全,腎機能不全に寄与した可能性がある.(米国国立心臓・肺・血液研究所,AstraZeneca 社医師主導治験プログラムから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00979121)