November 27, 2014 Vol. 371 No. 22
コンゴ民主共和国におけるエボラウイルス病
Ebola Virus Disease in the Democratic Republic of Congo
G.D. Maganga and Others
西アフリカで大規模なエボラウイルス病(EVD)の流行が拡大するなか,赤道アフリカのコンゴ民主共和国(以下,コンゴ)で 7 回目の EVD 集団発生が 2014 年 7 月 26 日に始まった.赤道アフリカと西アフリカで EVD が同時に報告されたことから,この 2 つの集団発生の関連について疑問が生じた.
標準的な世界保健機関(WHO)のウイルス性出血熱臨床調査票を用いて,コンゴの患者のデータを入手した.患者を,EVD の疑い例,ほぼ確実例,確定例,非 EVD 疾患例に分類した.血液検体を採取し,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)診断,ウイルス分離,配列決定,系統解析を行った.
集団発生は,赤道州ボエンデ保健区周辺のインカナモンゴ村で始まり,この州に限定されている.2014 年 7 月 26 日~10 月 7 日に,疑い例,ほぼ確実例,確定例計 69 例が報告され,うち 8 例は医療従事者で,49 例が死亡した.10 月 7 日現在,EVD 集団発生の開始以降,症例発生のピークは 6 回認められている.報告された 1 週間の症例発生率は,8 月 17 日と 24 日の週にピークに達し,その後は急激に低下している.ゲノム配列決定によって,エボラウイルス(EBOV,ザイール種)がこの集団発生の原因であることが明らかになった.この集団発生で分離された EBOV の全コード領域のゲノム配列決定により,コンゴのキクウィトでの 1995 年の集団発生に由来するもっとも近縁な変異株との一致率は 99.2%,西アフリカで現在流行している EBOV 変異株との一致率は 96.8%であることが示された.
コンゴにおける現在の EVD 集団発生の臨床的・疫学的特徴は,赤道アフリカで過去に起こった EVD 集団発生のものと類似している.病原体は地域固有の EBOV 変異株であり,この集団発生は,西アフリカの 2014 年の流行株とは異なる人獣共通の病原体に由来する.(フランスヴィル国際医学研究センターほかから研究助成を受けた.)