中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する手術治療の 2 年後の転帰
Two-Year Outcomes of Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation
R.E. Michler and Others
中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症患者で冠動脈バイパス術(CABG)単独と CABG+僧帽弁形成術とを比較した試験では,1 年後の左室収縮末期容積係数(LVESVI)と生存に有意差は認められなかった.僧帽弁形成術を同時施行した例では,中等度または高度の僧帽弁逆流の有病率が低かったが,有害事象がより多く認められた.今回,2 年後の転帰を報告する.
301 例を CABG 単独群または CABG+僧帽弁形成術群に無作為に割り付けた.患者を,臨床転帰と心エコー上の転帰について 2 年間追跡した.
2 年の時点で,平均(±SD)LVESVI は CABG 単独群 41.2±20.0 mL/m2 体表面積,CABG+僧帽弁形成術群 43.2±20.6 mL/m2 であった(ベースラインからの改善の平均はそれぞれ -14.1 mL/m2,-14.6 mL/m2).死亡率は CABG 単独群 10.6%,CABG+僧帽弁形成術群 10.0%であった(CABG+僧帽弁形成術群のハザード比 0.90,95%信頼区間 0.45~1.83,P=0.78).2 年の時点での LVESVI(死亡を含む)の順位和検定に基づく評価で,群間に有意差は認められなかった(z スコア 0.38,P=0.71).中等度または高度の僧帽弁逆流の 2 年残存率は,CABG 単独群のほうが CABG+僧帽弁形成術群よりも高かった(32.3% 対 11.2%,P<0.001).再入院,重篤な有害事象の全体の発現率は両群で同程度であったが,神経系有害事象と上室性不整脈の頻度は CABG+僧帽弁形成術群のほうが高いままであった.
中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対し CABG を受ける患者に僧帽弁形成術を追加しても,2 年の時点での左室逆リモデリングに有意差は生じなかった.僧帽弁形成術は,僧帽弁逆流のより持続的な改善をもたらしたが,生存期間の有意な延長,有害事象・再入院の全体の有意な減少はもたらさず,術後早期に神経系有害事象と上室性不整脈が増加するリスクと関連していた.(米国国立衛生研究所, カナダ保健研究機構から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00806988)