小児および若年成人の心臓突然死に関する前向き研究
A Prospective Study of Sudden Cardiac Death among Children and Young Adults
R.D. Bagnall and Others
小児および若年成人の心臓突然死は悲しく衝撃的な出来事である.われわれは,小児および若年成人の心臓突然死に関する人口ベースの前向き臨床的・遺伝学的研究を行った.
オーストラリアおよびニュージーランドで 2010~12 年に心臓突然死した 1~35 歳の小児および若年成人の全症例から,臨床情報,人口統計学的情報,剖検結果を前向きに収集した.毒性学的検査,組織学的検査を含む包括的な剖検で原因が特定されなかった症例(原因不明の心臓突然死)には,心疾患に関連する遺伝子の変異を検索するため,少なくとも 59 種類の心臓関連遺伝子の解析を行った.
490 例の心臓突然死が同定された.年間発生率は 1~35 歳 100,000 人あたり 1.3 例であり,症例の 72%が男性であった.心臓突然死の発生率は 31~35 歳群がもっとも高く(100,000 人あたり 3.2 例/年),原因不明の心臓突然死の発生率は 16~20 歳群がもっとも高かった(100,000 人あたり 0.8 例/年).剖検で特定された心臓突然死の原因で頻度が高かったのは冠動脈疾患(症例の 24%),遺伝性心筋症(16%)であった.31~35 歳群では冠動脈疾患の所見がもっとも多かったが,それ以外のすべての年齢群では,原因不明の心臓突然死(症例の 40%)がもっとも多かった.31~35 歳群よりも若年であることと夜間の死亡には,原因が特定された心臓突然死と比較して,原因不明の心臓突然死との独立した関連が認められた.原因不明の心臓突然死のうち,遺伝子検査を行いえた 113 例中 31 例(27%)に心疾患に関連する遺伝子の変異が認められた.原因不明の心臓突然死が発生した家族の追跡調査により,13%で遺伝性心疾患が臨床的に診断された.
剖検に遺伝子検査を追加することで,小児および若年成人の心臓突然死の可能性のある原因が同定される件数が大幅に増加した.(オーストラリア国立保健医療研究審議会ほかから研究助成を受けた.)