熱帯熱マラリア原虫の K13-propeller 多型の世界分布図
A Worldwide Map of Plasmodium falciparum K13-Propeller Polymorphisms
D. Ménard and Others
マラリアの世界的負担は近年軽減に成功しつつあるが,アルテミシニン(artemisinin)耐性熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の出現によって脅かされている.熱帯熱マラリア原虫の kelch(K13)-propeller 領域をコードする遺伝子の一部の変異が耐性の主要な決定要因であることが明らかになり,アルテミシニン耐性を世界規模でモニタリングする機会が与えられた.
マラリアが流行している 59 ヵ国で採取された検体 14,037 例の K13-propeller 配列多型を解析した.検体の大部分(84.5%)は,抗マラリア薬耐性に関する全国調査の定点監視施設で治療を受けた患者から採取された.隣接座位のハプロタイプ決定によって変異の出現と分布を評価した.
K13 の非同義変異 108 種類が同定され,出現頻度と分布には地域ごとに大きなばらつきがみられた.アジアでは,K13 変異の頻度は 36.5%で,カンボジア・ベトナム・ラオス地域と,タイ西部・ミャンマー・中国地域の 2 地域に分布しており,変異の種類に重複はみられなかった.アフリカでは,原虫消失遅延との関連が示されていない,まれな非同義変異が数多く観察された.アフリカでもっとも高頻度に観察されたアレルを発現する A578S 変異で遺伝子編集した Dd2 トランスジェニック体は,in vitro での輪状体期の生存アッセイ(RSA)でアルテミシニンに感受性を示すことがわかった.
東南アジアと中国ではアルテミシニン耐性に関連する K13 変異が局地的に確認されたが,その他の地域では耐性の証拠は示されなかった.アフリカで高頻度に認められた A578S アレルには,臨床的にも in vitro でも,アルテミシニン耐性との関連は認められず,アフリカで認められた多くの変異は中立的であると考えられる.(パリ・パスツール研究所ほかから研究助成を受けた.)