January 28, 2016 Vol. 374 No. 4
医療過誤損害賠償を請求される傾向がある医師の割合および特性
Prevalence and Characteristics of Physicians Prone to Malpractice Claims
D.M. Studdert and Others
医師のあいだで医療過誤損害賠償請求がどのように分布しているかについては,十分理解されていない.損害賠償を請求される傾向にある医師が損害賠償請求全体の大きな割合を占めているのであれば,そのような医師を早い段階で確実に見つけることができれば,ケアを改善する取組みの指針となる可能性がある.
全米医師データバンクのデータを用いて,2005~14 年に支払いにいたった,医師 54,099 人に対する損害賠償請求 66,426 件を解析した.医師のあいだの損害賠償請求の集中状況を算出した.再発イベントの多変量生存時間解析を用いて,損害賠償請求再発のリスクが高い医師の特性を明らかにし,経時的なリスクレベルを定量化した.
全医師の約 1%が,支払いにいたった損害賠償請求の 32%を占めていた.支払いにいたった損害賠償を請求された医師のうち,対象期間中の損害賠償請求の件数が 1 回のみであった医師は 84%(支払いにいたった損害賠償請求全体の 68%),2 回以上の医師は 16%(請求全体の 32%),3 回以上の医師は 4%であった(請求全体の 12%).補正解析では,再発リスクは過去の支払いにいたった損害賠償請求の件数に応じて上昇した.たとえば,過去に支払いにいたった損害賠償請求の件数が 1 回の医師と比較して,3 回の医師 2,160 人が損害賠償をもう 1 回請求されるリスクは 3 倍高く(ハザード比 3.11,95%信頼区間 [CI] 2.84~3.41),絶対値では,支払いにいたる損害賠償を 2 年以内にもう 1 回請求される確率が 24%(95% CI 22~26)であることに相当した.再発リスクは医師の専門領域によっても大きく異なり,たとえば神経外科医におけるリスクは,精神科医におけるリスクの 4 倍高かった.
この 10 年間で,特有の特性を有する少数の医師が,支払いにいたった医療過誤損害賠償請求の不釣合いなほど大きな割合を占めていた.