January 28, 2016 Vol. 374 No. 4
重症虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する手術治療の 2 年後の転帰
Two-Year Outcomes of Surgical Treatment of Severe Ischemic Mitral Regurgitation
D. Goldstein and Others
重症虚血性僧帽弁閉鎖不全症の患者で僧帽弁形成術と僧帽弁置換術とを比較した無作為化試験では,術後 1 年の時点で左室収縮末期容積係数(LVESVI),生存,有害事象のいずれにも有意差は認められなかった.しかし,形成術群の患者では,中等度または重度の僧帽弁逆流の再発が有意に多く認められた.この試験の 2 年後の転帰を報告する.
251 例を僧帽弁形成術または僧帽弁置換術に無作為に割り付けた.患者を 2 年間追跡し,臨床転帰と心エコー上の転帰を評価した.
生存例における 2 年の時点での平均(±SD)LVESVI は,僧帽弁形成術群 52.6±27.7 mL/m2 体表面積,僧帽弁置換術群 60.6±39.0 mL/m2 体表面積であった(ベースラインからの変化の平均はそれぞれ -9.0 mL/m2,-6.5 mL/m2).2 年死亡率は,形成術群 19.0%,置換術群 23.2%であった(形成術群のハザード比 0.79,95%信頼区間 0.46~1.35,P=0.39).2 年の時点での LVESVI は順位和検定を用いて(死亡を組み入れて)比較したが,群間で有意差は認められなかった(z スコア=-1.32,P=0.19).2 年間の中等度または重度の僧帽弁逆流の再発率は,形成術群のほうが置換術群よりも高かった(58.8% 対 3.8%,P<0.001).重篤な有害事象の発現率と全再入院の発生率に群間で有意差は認められなかったが,形成術群では心不全に関連する重篤な有害事象が多く(P=0.05),心血管系の原因による再入院も多かった(P=0.01).ミネソタ心不全 QOL 質問票上では,置換術群で改善がより大きい傾向が認められた(P=0.07).
重症虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁形成術を受けた患者と僧帽弁置換術を受けた患者とで,2 年の時点での左室逆リモデリングおよび生存に群間で有意差は認められなかった.僧帽弁逆流の再発頻度は形成術群のほうが高く,その結果として,心不全に関連する有害事象と,心血管系の原因による入院が多かった.(米国国立衛生研究所,カナダ保健研究機構から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00807040)