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December 8, 2016 Vol. 375 No. 23

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米国の血液供給における Babesia microti のスクリーニング
Screening for Babesia microti in the U.S. Blood Supply

E.D. Moritz and Others

背景

マダニ媒介性の赤血球内寄生原虫である Babesia microti は,輸血によって伝播する可能性があり,米国内における輸血感染バベシア症症例の大部分の原因となっている.しかし,献血血液中の B. microti のスクリーニング法として認可された検査は存在しない.われわれは,研究段階の製品出荷前検査による大規模スクリーニングと,献血者追跡調査プログラムから得られたデータを評価した.

方 法

2012 年 6 月~2014 年 9 月に,コネチカット州,マサチューセッツ州,ミネソタ州,ウィスコンシン州で採血された献血検体において,B. microti の抗体を検出する免疫蛍光アレイ法(AFIA)と,B. microti の DNA を検出するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を行った.定量的 PCR 法を用いて寄生虫量を測定し,ハムスターに検体を接種し,原虫血症の発症を観察して感染力を評価した.検査で反応が認められた検体の献血者を追跡した.輸血感染バベシア症症例のデータを用いて,スクリーニングされた献血とスクリーニングされていない献血とで,感染性が認められた血液の割合を比較した.

結 果

検査された献血 89,153 検体のうち,335 検体(0.38%)が陽性であった.このうち PCR 陽性であったのは 67 検体(20%)で,9 検体が抗体陰性であり(すなわち抗体陰性の検出能はスクリーニング 9,906 検体あたり 1 検体),PCR 陽性検体全体の 13%が抗体陰性であった.PCR 陽性の検体は通年で同定され,抗体陰性の感染は 6 月から 9 月にかけて発生した.ハムスターに注入した PCR 陽性または高力価 AFIA 陽性の献血由来の赤血球検体の約 1/3 で,感染が認められた.陽性献血者の追跡では,1 年後に DNA のクリアランスが認められた割合は 86%であったが,抗体陰転が認められた割合は 8%であった.コネチカット州とマサチューセッツ州では,輸血感染バベシア症症例は,スクリーニングされた献血では認められなかったが(75,331 件あたり 0 例),スクリーニングされていない献血では 253,031 件あたり 14 例(18,074 件あたり 1 例)認められた(オッズ比 8.6,95%信頼区間 0.51~144,P=0.05).全体では,輸血感染バベシア症 29 例で,感染献血者の血液(献血から 2~7 ヵ月後の PCR で陽性を示した 10 例の血液を含む)との関連が確認された.

結 論

B. microti に対する抗体と B. microti 由来 DNA を検出する献血血液のスクリーニング法は,輸血感染バベシア症のリスク低下に関連した.(米国赤十字社,Imugen 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01528449)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 2236 - 45. )