September 8, 2016 Vol. 375 No. 10
微小残存病変を有する患者における臍帯血移植
Cord-Blood Transplantation in Patients with Minimal Residual Disease
F. Milano and Others
造血細胞移植を必要とする患者の大多数には,HLA 適合血縁ドナーがいない.他のさまざまなドナー細胞源のなかから選択する際に有用なデータが必要である.
後ろ向き解析において,急性白血病または骨髄異形成症候群の患者に対し,非血縁臍帯血ドナー,HLA 適合非血縁ドナー,HLA 不適合非血縁ドナーから初回骨髄破壊的造血細胞移植を受けた,連続する 582 例の転帰を比較した.内訳は,非血縁臍帯血ドナー 140 例,HLA 適合非血縁ドナー 344 例,HLA 不適合非血縁ドナー 98 例であった.
臍帯血群と他の 2 つの非血縁ドナー群とのあいだの死亡および再発の相対リスクは,移植前の微小残存病変(MRD)の有無によって異なると考えられた.MRD を有する患者では,死亡リスクは,HLA 不適合群のほうが臍帯血群よりも高かった(ハザード比 2.92,95%信頼区間 [CI] 1.52~5.63,P=0.001).死亡リスクは,HLA 適合群も臍帯血群より高かったが,有意ではなかった(ハザード比 1.69,95% CI 0.94~3.02,P=0.08).MRD を有しない患者では,ハザード比は低くなった(HLA 不適合群のハザード比 1.36,95% CI 0.76~2.46,P=0.30;HLA 適合群のハザード比 0.78,95% CI 0.48~1.28,P=0.33).MRD を有する患者では,再発リスクは,2 つの非血縁ドナー群のほうが臍帯血群よりも有意に高かった(HLA 不適合群のハザード比 3.01,95% CI 1.22~7.38,P=0.02;HLA 適合群のハザード比 2.92,95% CI 1.34~6.35,P=0.007).MRD を有しない患者では,これらの関連の強さは小さくなった(HLA 不適合群のハザード比 1.28,95% CI 0.51~3.25,P=0.60;HLA 適合群のハザード比 1.30,95% CI 0.65~2.58,P=0.46).
今回のデータから,移植前に MRD を有する患者では,臍帯血ドナーから移植を受けた場合,移植後の全生存率は,HLA 適合非血縁ドナーから移植を受けた場合と少なくとも同程度に良好であり,HLA 不適合非血縁ドナーから移植を受けた場合よりも有意に高いことが示唆された.さらに,再発率は,臍帯血群のほうが他の 2 群よりも低かった.