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August 30, 2018 Vol. 379 No. 9

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世界での 3 価経口ポリオワクチン中止後の 2 型ポリオウイルスの検出
Type 2 Poliovirus Detection after Global Withdrawal of Trivalent Oral Vaccine

I.M. Blake and Others

背景

経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の大規模キャンペーンにより,世界は野生株ポリオウイルスの根絶に近づいている.しかし,根絶を成し遂げるには,ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)の集団感染を予防するため,OPV そのものを中止する必要がある.2016 年 4 月に OPV の世界同時の中止が血清型 2 型 OPV(OPV2)から開始され,すべてのポリオウイルス根絶の実現可能性を検証する最初の機会となった.

方 法

118 ヵ国の,急性弛緩性麻痺をきたした小児 495,035 例の便検体と,伝播リスクの高い 4 ヵ国で採取した 8,528 の下水検体における,血清型 2 型セービン株ワクチン(セービン 2)ポリオウイルスと,血清型 2 型ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV2;ウイルス蛋白 1 ゲノム領域についてセービン 2 ポリオウイルスから 0.6%以上変異しているワクチン株と定義)の検出に関する世界規模のサーベイランスデータを解析した.検体は 2013 年 1 月 1 日~2018 年 7 月 11 日に収集した.ベイズフレームワークの時空間平滑化とロジスティック回帰を用いて,セービン 2 ポリオウイルスと VDPV2 の持続的な検出の危険因子を同定し,地図上に示した.

結 果

便検体におけるセービン 2 ポリオウイルス保有率は,OPV2 中止時点での 3.9%(95%信頼区間 [CI] 3.5~4.3)から中止後 2 ヵ月の時点で 0.2%(95% CI 0.1~2.7)に低下し,下水検体中の検出率は同期間に 71.0%(95% CI 61.0~80.0)から 13.0%(95% CI 8.0~20.0)に低下した.しかし,VDPV2 の集団感染に対応するために OPV2 が使用されたことにより,OPV2 中止後 12 ヵ月の時点でもセービン 2 ポリオウイルスは便検体(<0.1%,95% CI <0.1~0.1)と下水検体(8.0%,95% CI 5.0~13.0)で検出された.9 件の集団感染が OPV2 中止後に報告されており,発生国で定期予防接種率が低いこと(絶対値で 10%の低下あたりのオッズ比 1.64 [95% CI 1.14~2.54])と,集団の免疫保有率が低いこと(絶対値で 10%の低下あたりのオッズ比 2.60 [95% CI 1.35~5.59])との関連が認められた.

結 論

集団の免疫保有率が高いことで OPV2 中止後のセービン 2 ポリオウイルス保有率の低下が促進され,伝播リスクが高いことが知られている地域への VDPV2 の循環が抑制されている.2 型ポリオウイルスに感染しやすい小児の集団が蓄積される前に,これらの既知の地域で VDPV2 集団感染を予防することが,依然として優先順位の高い事項である.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団,世界保健機関から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2018; 379 : 834 - 45. )