The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 14, 2019 Vol. 380 No. 11

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

ACLY と心血管疾患のメンデルランダム化解析
Mendelian Randomization Study of ACLY and Cardiovascular Disease

B.A. Ference and Others

背景

ATP クエン酸リアーゼは,スタチンの標的である 3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素 A 還元酵素(HMGCR)のコレステロール生合成経路の上流に存在する酵素である.ATP クエン酸リアーゼの遺伝子阻害は,有害転帰と関連しているのか,また,低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値の 1 単位低下あたりの影響が,HMGCR の遺伝子阻害と同様であるのかは明らかにされていない.

方 法

ATP クエン酸リアーゼ阻害薬と HMGCR 阻害薬(スタチン)に似た作用をもつ操作変数を作成するため,ATP クエン酸リアーゼをコードする遺伝子(ACLY)と HMGCR をコードする遺伝子のそれぞれで,独立に遺伝した変異から成る遺伝子スコアを構築した.次に,これらの遺伝子スコアと,血漿脂質値,リポ蛋白値,心血管イベントおよび癌のリスクとの関連を比較した.

結 果

主要心血管イベントを発症した参加者 105,429 例を含む,合計 654,783 例を研究対象とした.ACLY のスコアと HMGCR のスコアは,血漿脂質値とリポ蛋白値の変化のパターンが同様であり,LDL コレステロール値が 10 mg/dL 低下するごとの心血管イベントのリスクに対する影響も同様であり,心血管イベントのオッズ比は,ACLY スコアが 0.823(95%信頼区間 [CI] 0.78~0.87,P=4.0×10-14),HMGCR スコアが 0.836(95% CI 0.81~0.87,P=3.9×10-19)であった.生涯にわたる ATP クエン酸リアーゼの遺伝子阻害と,生涯にわたる HMGCR の遺伝子阻害は,いずれも癌のリスクの上昇に関連していなかった.

結 論

ATP クエン酸リアーゼ阻害薬とスタチンに似た作用をもつ遺伝子変異は,同じ作用機序で血漿 LDL コレステロール値を低下させると考えられ,LDL コレステロール値の 1 単位低下あたりの心血管疾患のリスクに対して同様の影響を示した.(エスペリオンセラピューティクス社ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 1033 - 42. )