March 28, 2019 Vol. 380 No. 13
医療過誤の損害賠償請求を受けた医師における診療の変化
Changes in Practice among Physicians with Malpractice Claims
D.M. Studdert and Others
医療過誤責任の記録が多い医師は,患者の安全を危険にさらす可能性がある.そのような医師は診療再開のために移動する傾向にあるが,診療を続けているのか,どこで,どのように続けているのかが明らかでないことが長年の懸念である.
全米医師データバンク(NPDB)から抽出したデータを,医療提供者の診療と専門領域に関するメディケアデータ(MD-PPAS)のデータセットとリンクさせ,2008~15 年に診療を行っていた 35~65 歳の医師の全米コホートを作成した.医師が医療過誤の損害賠償請求を受けて支払った回数と,診療の停止,臨床診療回数の変化,地理的な移動,診療グループの規模の変化との関連を解析した.
コホートは医師 480,894 人から成り,2003~15 年に支払われた損害賠償請求は 68,956 件であった.請求を受けたことのない医師が 89.0%,請求を 1 回受けた医師が 8.8%で,残る 2.3%の医師は請求を 2 回以上受け,全請求の 38.9%を占めていた.請求を受けた回数は診療を辞めるオッズと正の関連を示した(請求なしに対する請求 1 回のオッズ比 1.09,95%信頼区間 [CI] 1.06~1.11;請求 5 回以上のオッズ比 1.45,95% CI 1.20~1.74).請求を受けた回数は地理的な移動とは関連しなかったが,より規模の小さい診療環境への移行と正の関連を示した.たとえば,請求を 5 回以上受けた医師は,請求を受けていない医師と比較して,個人診療(solo practice)へ移行するオッズが 2 倍以上であった(オッズ比 2.39,95% CI 1.79~3.20).
医療過誤の損害賠償請求を複数回受けた医師は,請求を受けたことのない医師と比較して,地理的に移動する確率は同程度に低かったが,診療を停止する確率と,より小規模な診療環境に変える確率は高かった.(SUMIT Insurance 社,オーストラリア研究審議会から研究助成を受けた.)