抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体陽性の女性に対する妊娠前のレボチロキシン
Levothyroxine in Women with Thyroid Peroxidase Antibodies before Conception
R.K. Dhillon-Smith and Others
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は,甲状腺機能が正常であっても流産と早産のリスク上昇に関連する.小規模試験で,レボチロキシンの使用により,そのような有害転帰が減少しうることが示されている.
二重盲検プラセボ対照試験において,甲状腺機能が正常で抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が陽性の,流産歴または不妊症治療歴がある女性を対象に,レボチロキシンの投与により生児出生率が上昇するかどうかを検討した.英国の 49 病院の 19,585 例が,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体と甲状腺機能の検査を受けた.952 例を,レボチロキシン 50μg を 1 日 1 回投与する群(476 例)とプラセボを投与する群(476 例)に無作為に割り付け,妊娠前から妊娠終了時まで投与した.主要転帰は妊娠 34 週以降の生児出生とした.
主要転帰の追跡率は 98.7%(952 例中 940 例)であった.レボチロキシン群 470 例中 266 例(56.6%),プラセボ群 470 例中 274 例(58.3%)が妊娠した.生児出生率は,レボチロキシン群で 37.4%(470 例中 176 例),プラセボ群で 37.9%(470 例中 178 例)であった(相対リスク 0.97,95%信頼区間 [CI] 0.83~1.14,P=0.74,絶対差-0.4 パーセントポイント,95% CI -6.6~5.8).妊娠喪失や早産などのその他の妊娠転帰,および新生児転帰に群間で有意差は認められなかった.重篤な有害事象は,レボチロキシン群の 5.9%とプラセボ群の 3.8%に発現した(P=0.14).
甲状腺機能が正常で抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が陽性の女性にレボチロキシンを使用しても,プラセボと比較して生児出生率が上昇することはなかった.(英国国立健康研究所から研究助成を受けた.TABLET 試験:Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN15948785)