The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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日本語アブストラクト

October 24, 2019 Vol. 381 No. 17

駆出率が保持された心不全に対するアンジオテンシン–ネプリライシン阻害
Angiotensin–Neprilysin Inhibition in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction

S.D. Solomon and Others

背景

アンジオテンシン受容体–ネプリライシン阻害薬であるサクビトリル(sacubitril)–バルサルタンは,駆出率が低下した心不全患者の心不全による入院や心血管系の原因による死亡のリスクを低下させることが示された.駆出率が保持された心不全患者におけるアンジオテンシン受容体–ネプリライシン阻害薬の有効性は明らかにされていない.

方 法

ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類 II~IV 度の心不全,駆出率 45%以上,ナトリウム利尿ペプチド高値,構造的心疾患を有する患者 4,822 例を,サクビトリル–バルサルタン(目標用量はサクビトリル 97 mg とバルサルタン 103 mg を 1 日 2 回)を投与する群と,バルサルタン(目標用量は 160 mg を 1 日 2 回)を投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,心不全による全入院と心血管系の原因による死亡の複合とした.主要転帰の各項目,副次的転帰(NYHA 分類の変化,腎機能の悪化,カンザスシティ心筋症質問票 [KCCQ] 臨床サマリースコア [0~100 点で,スコアが高いほど症状および身体的制限が少ないことを示す] の変化など),安全性についても評価した.

結 果

主要転帰イベントは,サクビトリル–バルサルタン群の 526 例で 894 件,バルサルタン群の 557 例で 1,009 件発生した(率比 0.87,95%信頼区間 [CI] 0.75~1.01,P=0.06).心血管系の原因による死亡の発生率はサクビトリル–バルサルタン群で 8.5%,バルサルタン群で 8.9%であり(ハザード比 0.95,95% CI 0.79~1.16),心不全による全入院数はそれぞれ 690 件と 797 件であった(率比 0.85,95% CI 0.72~1.00).NYHA 分類はサクビトリル–バルサルタン群の 15.0%とバルサルタン群の 12.6%で改善し(オッズ比 1.45,95% CI 1.13~1.86),腎機能はそれぞれ 1.4%と 2.7%で悪化した(ハザード比 0.50,95% CI 0.33~0.77).8 ヵ月の時点における KCCQ 臨床サマリースコアの変化の平均は,サクビトリル–バルサルタン群のほうが 1.0 点(95% CI 0.0~2.1)高かった.サクビトリル–バルサルタン群の患者のほうが血圧低下と血管性浮腫の発生率が高く,高カリウム血症の発生率が低かった.事前に規定した 12 のサブグループのうち,駆出率が低下した患者と女性では,サクビトリル–バルサルタンによって得られる可能性のある治療効果に不均一性があることが示唆された.

結 論

サクビトリル–バルサルタンは,駆出率 45%以上の心不全患者では,心不全による全入院と心血管系の原因による死亡の発生率を有意には低下させなかった.(ノバルティス社から研究助成を受けた.PARAGON-HF 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01920711)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 381 : 1609 - 20. )