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March 10, 2022 Vol. 386 No. 10

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低リスク甲状腺癌患者に対する術後に放射性ヨウ素を用いない甲状腺切除術
Thyroidectomy without Radioiodine in Patients with Low-Risk Thyroid Cancer

S. Leboulleux and Others

背景

甲状腺切除術を行う低リスク分化型甲状腺癌患者に対する術後の放射性ヨウ素(ヨウ素 131)の投与は,利益が実証されておらず議論がある.

方 法

前向き無作為化第 3 相試験で,甲状腺切除術を行う低リスク分化型甲状腺癌患者を,術後に,遺伝子組換えヒトチロトロピンを投与後放射性ヨウ素(1.1 GBq)によるアブレーションを行う群(放射性ヨウ素群)と,術後に放射性ヨウ素を投与しない群(非放射性ヨウ素群)に割り付けた.主要目的は,放射性ヨウ素療法を実施しないことが,実施することと比較して,複合エンドポイントが発生しない点について非劣性であるかどうかを評価することとした.複合エンドポイントは 3 年の時点での機能的異常,構造的異常,生物学的異常とした.非劣性は,イベントが発生しなかった患者の割合の群間差が 5 パーセントポイント未満であることと定義した.イベントは,その後治療が必要となる放射性ヨウ素の取込みを認める異常病巣の全身スキャンでの検出(放射性ヨウ素群のみ),頸部超音波検査での異常所見,サイログロブリンまたはサイログロブリン抗体の上昇とした.副次的エンドポイントはイベントの予後因子,分子学的特性などとした.

結 果

無作為化後 3 年間評価しえた 730 例において,イベントが発生しなかった患者の割合は非放射性ヨウ素群 95.6%(95%信頼区間 [CI] 93.0~97.5),放射性ヨウ素群 95.9%(95% CI 93.3~97.7)であり,差は -0.3 パーセントポイント(両側 90% CI -2.7~2.2)で,非劣性の基準を満たした.イベントは,構造的異常または機能的異常が 8 例に,生物学的異常が 23 例に 25 件発生した.イベントの頻度は,術後の甲状腺ホルモン療法中に血清サイログロブリン濃度が 1 ng/mL を超えていた患者でより高かった.分子学的変異は,イベントが発生した患者と発生しなかった患者で同程度であった.治療関連有害事象は報告されなかった.

結 論

甲状腺切除術を行う低リスク甲状腺癌患者において,放射性ヨウ素を用いず経過観察を行う戦略は,放射性ヨウ素によるアブレーションを行う戦略と比較して,3 年の時点での機能的異常,構造的異常,生物学的異常の発生に関して非劣性であった.(フランス国立がん研究所から研究助成を受けた.ESTIMABL2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01837745)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 923 - 32. )