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October 27, 2022 Vol. 387 No. 17

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目撃された心停止に対する居合わせた人による心肺蘇生の人種・民族差
Racial and Ethnic Differences in Bystander CPR for Witnessed Cardiac Arrest

R.A. Garcia and Others

背景

院外心停止では,居合わせた人による心肺蘇生(CPR)実施率の差が,生存率の差に寄与する.介入に必要な情報を得るためには,自宅または公共の場での,目撃された院外心停止に対する居合わせた人による CPR 実施率が,心停止患者の人種・民族によって異なるかどうかを理解することがきわめて重要である.

方 法

米国の大規模登録から,2013~19 年の期間に目撃された院外心停止 110,054 件を同定した.階層的ロジスティック回帰モデルを用いて,自宅または公共の場での,目撃された黒人・ヒスパニック系の心停止患者に対する居合わせた人による CPR 実施率を,白人患者の場合と比較して解析した.全体の割合と,居住地域の人種・民族構成別,所得層別の割合を解析した.居住地域は,白人主体(住民の 80%超),過半数が黒人・ヒスパニック系(住民の 50%超),混合に分類し,高所得(年間世帯所得の中央値が 80,000 ドル超),中所得(40,000~80,000 ドル),低所得(40,000 ドル未満)にも分類した.

結 果

全体で,目撃された院外心停止のうち,35,469 件(32.2%)が黒人・ヒスパニック系で発生した.自宅で,居合わせた人による CPR を受ける確率は,黒人・ヒスパニック系(38.5%)のほうが白人(47.4%)よりも低く(補正オッズ比 0.74,95%信頼区間 [CI] 0.72~0.76),公共の場で,居合わせた人による CPR を受ける確率も黒人・ヒスパニック系のほうが低かった(45.6% 対 60.0%)(補正オッズ比 0.63,95% CI 0.60~0.66).黒人・ヒスパニック系に対して居合わせた人による CPR 実施率は,白人主体の地域では,自宅(補正オッズ比 0.82,95% CI 0.74~0.90)と公共の場(補正オッズ比 0.68,95% CI 0.60~0.75)で白人よりも低く,過半数が黒人・ヒスパニック系の地域でも,自宅(補正オッズ比 0.79,95% CI 0.75~0.83)と公共の場(補正オッズ比 0.63,95% CI 0.59~0.68)で白人よりも低く,混合地域でも,自宅(補正オッズ比 0.78,95% CI 0.74~0.81)と公共の場(補正オッズ比 0.73,95% CI 0.68~0.77)で白人よりも低かった.居住地域の所得層全体でも,自宅と公共の場の両方で,居合わせた人により CPR を受ける頻度は,黒人・ヒスパニック系の患者のほうが白人患者よりも低かった.

結 論

目撃された院外心停止患者が,自宅と公共の場で,居合わせた人により救命につながりうる CPR を受ける確率は,心停止が発生した居住地域の人種・民族構成や所得水準にかかわらず,黒人・ヒスパニック系のほうが白人よりも低かった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 1569 - 78. )