多血症の原因としての肝由来様エリスロポエチンの同定
Identification of Hepatic-like EPO as a Cause of Polycythemia
L. Martin and Others
二次性赤血球増加症は,組織の低酸素や,エリスロポエチン(EPO)産生の不適切な増加を引き起こす病態に起因することが多い.EPO は赤血球生成の主要な制御因子であり,胎児の発生過程での発現は複雑で,厳格に制御されており,産生部位は出生後すぐに肝臓から腎臓に切り替わる.
血中 EPO 濃度が正常範囲内の赤血球増加症であり,新規の分子的・機能的概念とみなされた 6 家族を同定した.特定した病的バリアントの影響を,EPO プロモーターで発現するルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いて検討した.患者の細胞から人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を作製し,肝細胞様 EPO 産生細胞に分化させた.遺伝性赤血球増加症患者と,健康な新生児の血中 EPO 検体を等電点電気泳動法で分析し,EPO 活性を評価した.
EPO の非コード領域に,3 つの新規バリアントを特定した.レポーターアッセイによる実験と,iPS 細胞由来の肝細胞様細胞を用いた実験から,これらのバリアントは,この遺伝子のこれまで特徴が明らかにされていなかった制御エレメントを標的とすることと,このエレメントは,バリアントが存在する場合に低酸素に高い反応性を示すことが明らかになった.患者の EPO 検体はすべて,等電点電気泳動プロファイルが変化しており,早産児や肝疾患に伴う後天性赤血球増加症患者で発現している肝由来様 EPO と同一であった.患者の血漿検体と臍帯血検体から精製した EPO は,in vitro で EPO 受容体シグナル伝達活性の増強を示した.これは,EPO の肝臓型糖鎖付加に関連する機能獲得の可能性を示唆している.
二次性赤血球増加症は,非定型の糖鎖付加パターンをとり,活性が増強している肝由来様 EPO の産生を引き起こす,EPO のバリアントと関連する可能性があることが明らかになった.(ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03957863)