October 9, 2025 Vol. 393 No. 14
多発ニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシスに対するネクシグラン ジクルメランによる遺伝子編集
Nexiguran Ziclumeran Gene Editing in Hereditary ATTR with Polyneuropathy
J.D. Gillmore and Others
多発ニューロパチーを伴う遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTRv-PN)は,多臓器を侵す,まれな進行性,消耗性,致死性の疾患であり,ミスフォールドしたトランスサイレチン(TTR)の末梢神経組織への沈着を特徴とする.ネクシグラン ジクルメラン(nexiguran ziclumeran [nex-z])は,肝臓における TTR を選択的に不活性化することで血清中 TTR 濃度を低下させるようにデザインされた,CRISPR-Cas9(クラスター化された,規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し,および関連する Cas9 エンドヌクレアーゼ)をベースとする,現在試験中の生体内治療である.
第 1 相非盲検試験で,ATTRv-PN 患者に nex-z を単回注入した.主要目的は nex-z の安全性と薬力学を評価することであった.副次的評価項目は,家族性アミロイド多発ニューロパチーの病期,多発ニューロパチー障害スコア,血清中ニューロフィラメント軽鎖(NfL)濃度,修正体格指数(修正 BMI;通常の BMI [体重 {kg}/身長 {m}2] にアルブミン値 [g/L] を乗じた値と定義),修正ニューロパチー障害スコア+7(mNIS+7;0~304 で,値が高いほど機能障害が重度であることを示す)の変化などとした.
36 例が nex-z の投与を受け,平均追跡期間は 27 ヵ月であった.28 日の時点での血清中 TTR 濃度のベースラインからの平均変化率は -90%であり,24 ヵ月の時点まで持続した(-92%).治療関連有害事象は,一過性の注入に伴う反応(21 例),甲状腺機能低下症またはチロトロピン値上昇を伴わないサイロキシン値低下(8 例),頭痛(4 例)などであった.1 例は心アミロイドーシスにより死亡し,1 例は進行性の運動機能低下により試験を中止した.重篤な有害事象は 11 例で報告された.24 ヵ月の時点で,家族性アミロイド多発ニューロパチーの病期は 29 例で不変,2 例で改善,2 例で悪化であり,多発ニューロパチー障害スコアは 27 例で不変,5 例で改善,2 例で悪化であった.血清中 NfL 濃度の平均変化量は -9.0 pg/mL であり,修正 BMI の変化量は 24.7 であった.mNIS+7 のベースラインからの平均変化量は -8.5 であった.
ATTRv-PN 患者に対する nex-z の単回投与は,血清中 TTR 濃度の迅速,顕著,持続的な低下に関連していた.この結果から,ATTRv-PN の治療法として nex-z をさらに検討することが支持される.(インテリア セラピューティクス社,リジェネロン ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04601051)