October 9, 2025 Vol. 393 No. 14
ヤブカ媒介疾患を予防するための標的室内噴霧の無作為化試験
Randomized Trial of Targeted Indoor Spraying to Prevent Aedes-Borne Diseases
N.E. Dean and Others
標的室内残留噴霧では,ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(アルボウイルス病ベクター)が家屋内でよく休息する表面,たとえば露出している壁の下部や家具の下に殺虫剤を散布することに重点がおかれている.
メキシコのメリダで,ヤブカ媒介疾患(チクングニア,デング,ジカ)の予防を目的とした標的室内残留噴霧の有効性を定量的に評価する 2 群並行群間比較非盲検クラスター無作為化試験を行った.5×5 の街区の 50 クラスター内の世帯から,2~15 歳の小児を登録した.25 クラスターの世帯に,年 1 回,ヤブカ媒介疾患の各シーズン(7 月~12 月)の前に,標的室内残留噴霧(介入)を行った.保健省によるルーチンのベクター対策がすべてのクラスターに行われた.主要評価項目は,検査で確認された症状のあるヤブカ媒介疾患とした.地域社会効果は,試験クラスター内で発生したことがジオロケーションで確認された症例の全国サーベイランスデータを用いて評価した.
4,461 人を最大 3 シーズン(2021 年,2022 年,2023 年)モニターした.ネッタイシマカの室内密度は,介入群のほうが対照群よりも 59%(95%信頼区間 [CI] 51~65)低かった.422 例のヤブカ媒介疾患が確認され,主に 2023 年のデングであった.クラスター中心部の per-protocol 解析では,介入群の 1,038 人で 91 例,対照群の 1,037 人で 89 例発生した(有効率 -12.8%,95% CI -60.7~23.0).クラスター全体の intention-to-treat 解析では,介入群の 2,239 人で 198 例,対照群の 2,222 人で 199 例発生した(有効率 3.9%,95% CI -28.1~26.7).移動性や人口統計学的特性で解析を調整しても,結果は変化しなかった.ジオロケーションに基づく症例数は介入クラスターでは 150 例,対照クラスターでは 202 例であったことから,介入の地域社会効果は 24.0%(95% CI 6.0~38.6)と推定された.2 例にさまざまな症状を伴う有害事象(悪心,流涙,下痢,嘔吐など)が発現し,介入に関連する可能性があるとされた.
標的室内残留噴霧により,ルーチンのベクター対策と比較して昆虫学的指標は低くなったが,ヤブカ媒介疾患の累積発生率が有意に低くなることはなかった.(米国国立衛生研究所,革新的ベクター制御コンソーシアムから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04343521)