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November 27, 2025 Vol. 393 No. 21

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遺伝性出血性末梢血管拡張症の出血に対するエンガセルチブとプラセボとの比較
Engasertib versus Placebo for Bleeding in Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia

H. Al-Samkari and Others

背景

遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)は,反復する重度の鼻出血のほか,貧血,QOL 低下を引き起こす.認可された治療法はない.

方 法

概念実証(proof-of-concept)多施設共同二重盲検プラセボ対照試験で,HHT 患者を対象に,新規アロステリック選択的 AKT 阻害薬である経口エンガセルチブ(engasertib)の安全性と有効性を評価した.患者を,エンガセルチブ 30 mg を投与する群,エンガセルチブ 40 mg を投与する群,プラセボを投与する群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付け,1 日 1 回 12 週間投与した.主要転帰は,有害事象の発現頻度と重症度とした.重要な副次的転帰は,鼻出血の頻度と持続期間などとした.非盲検延長パートを実施中である.

結 果

75 例がエンガセルチブ 30 mg 群(24 例),エンガセルチブ 40 mg 群(25 例),プラセボ群(26 例)に割り付けられた.試験レジメンを 1 回以上受けた患者において,エンガセルチブに関連したオンターゲット有害事象としてとくに頻度が高かったのは,軽度~中等度の皮疹(エンガセルチブ 30 mg 群 5 例 [21%],エンガセルチブ 40 mg 群 10 例 [42%],プラセボ群 2 例 [8%]),軽度~中等度の高血糖(エンガセルチブ 40 mg 群 3 例 [12%],ほかの 2 群では 0 例)などであり,これらは可逆的であった.エンガセルチブの 30 mg 群と 40 mg 群における重篤な有害事象の発現率は,プラセボ群と同程度であった.ベースラインから 12 週までの鼻出血の頻度の平均(±SD)減少率は,エンガセルチブ 30 mg 群で 26.5±26.5%,エンガセルチブ 40 mg 群で 27.8±35.1%,プラセボ群で 18.0±36.0%であり,鼻出血の持続期間の平均減少率はそれぞれ 29.9±53.2%,41.4±41.0%,23.8±53.4%であった.

結 論

エンガセルチブの安全性プロファイルは,軽度~中等度の皮疹を除いてプラセボと同様であり,皮疹は,投与を継続した患者の大部分で消失した.エンガセルチブの投与は,鼻出血の頻度と持続期間の減少と関連した.(ヴァデリス セラピューティクス社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05406362)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 2131 - 41. )